男子禁制スイーツビュッフェ②
スイーツを食べられるのは満足だ。
けれども、こう、禊さんに好奇の目で見られるのはやっぱりいただけない。
「……スイーツとってこないの」
「それは梵にお願いしてるから大丈夫だ。それより、写真撮っていい?」
「ダメだ。見世物にするだろ」
「それくらいの常識は私は弁えているから大丈夫。自分で鑑賞するだけにとどめるから」
どうだか。
あ、このアップルパイ美味しいな。
パシャリ。
「……おい」
「食べてるときはいい笑顔なんだけどね」
といわれてもな。
「ほらほら、私のことはいないものだと思っていいから。次、食べ進めちゃって」
と促してくる。注意しても無駄そうだし、ここはあきらめるしかないのかもしれない。
空もスイーツ取ってくるっていって並んでるし、吉祥さんと村上さんに至ってはトイレに行っていた。ここには俺と禊さんしかいないし、禊さんだけなら被害も少ないか……。
「お、これ美味しいな。甘くて、それでいてクリーミーで……」
「ほんとに? 一つもらっちゃお」
「あ、それ俺が口付けたやつ……!」
禊さんは俺が口をつけたやつをパクリといってしまった。
そのシュークリーム一つしかとってきてないんだけど。食べられちゃったよ……。
「そんながっくししないでよ。私が悪者みたいじゃん」
「今日に限っては十分悪者だと思うけどな」
「そんなことないはず。うん。きっと久子ちゃんが可愛くて暴走してるとか絶対にない!」
それあるやつだからね!?
てか、人の口付けたやつ平然と食えるってすごいな。同性ならまだしも異性の。
もしかして今同性に見られてるとか? そういうわけないか。
「はぁ……。わかったよ。あとでとってくるから許して」
「いいよ。もう気にしてないし」
「そ、そう? ならよかった」
俺はスイーツを食べ進めた。
スイーツビュッフェも終わった。
俺はメイクを落とし、服を着替える。
「待たせたな」
そういうと、禊さんが目をそらした。照れたように、顔を赤くして。
「どうしたんだよ、禊さん」
「……今日、小鳥遊君の食べかけのシュークリーム食べちゃった」
「それで照れてるのか?」
俺もその時照れたけど本人気にしてなかったからいいかなって思ったんだが。
「きゅ、久太くん。今の話ホント?」
「あ、ああ。俺が食べかけてたやつをばくりといかれたんだ」
「……禊さん」
「ち、違うの! な、なんていうか小鳥遊君が本当に女の子に感じちゃって……。同性だから食べてもいいよねっていう考えが……」
「禊は昔から見たものでしか判断せんからな……。上っ面しか見ていない人間の雌よ!」
「ご、ごめん。私昔から勘違いが多くて……。きょ、今日も勘違いしたんだ! ごめん! 西園寺さん! 小鳥遊君!」
頭を下げて必死に謝っていた。
勘違いしてたのか……。俺女だと思われていたのだろうな。女装がうまいといえるのかもしれないが、なんか嬉しくない。異性に見られてなかったのか……。
「勘違いなら仕方ないか……。勘違いを生んだのはもともと私が女装させたからだし……。気にしてないよ」
「よ、よかった……」
「それにしても見た目はしっかりしてそうな禊ちゃんがまさかドジっ子だったとはねえ」
「見た目で評価はできませんね」
吉祥さんと村上さんも笑っていた。
まあ、まだ笑って許せる範囲だし、大目に見てやろう。
……あと、からかってやろ。このネタで。




