男子禁制スイーツビュッフェ①
西園寺家が贔屓にしているホテル。そのホテルで、日曜日の今日、スイーツビュッフェをするらしい。
……。スイーツか。
「し、親睦会を兼ねてみんなで美味しいもの食べよう!」
俺は、スイーツビュッフェに梵さんたちと来ていた。
「うわ! スイーツだらけ! ケーキとかシュークリーム、エクレアとかもあるし!」
「すごい……」
「……女子が多いな」
俺が見たところ女子しかいない。男性がいないのだ。
流石に入りづらいか。男性がこの女性の輪の中に入るということは。
でもまあ、こいつらが仲良くなれれば……。
俺は不意に隣に置いてある看板に目を通した。
『男子禁制』
……おう。来た意味がねえ。
「……俺、適当に暇つぶしてるから仲良くしててくれ」
「なんで?」
「いや、なんでって俺男だし」
「いやいや、なんで?」
「いや、空。あのな、看板には男子禁制と書いてあってだな」
「何が問題なの?」
いやいや、なんで『久太くんは入っていいのに』というイントネーションなの? 俺男子に含まれてるよ? 思いっきり男子だよ?
「ああ、なるほど」
「こりゃは入れんわ」
吉祥さんと禊さんも気づいたのか苦笑いを浮かべていた。
「問題ないよ。ちょっとこっちまできてね」
空に連れられて、俺は部屋に連れていかれた。
男子禁制の花園。
俺はなんでか知らないが、そこにいた。なんでいるんだろう。
「女装似合ってるよ……ぷっ」
「ふふ。本当に似合ってて逆に面白いですね」
女装させられていた。
空が持っていた紙袋はウィッグとか入っていて、女性用の服に着替えさせられた後、ウィッグをつけられて、メイクを少しされて……。女装させられていた。
いや、あの、女装してまで食べたいわけじゃないし……。というか、なんだよこの恥辱プレイ!
「汝。雌に性転換することを強く勧める」
「したかねえわ!」
本当に似合っているらしい。見せてもらったけどちょっと身長が大きい女子みたいに自然な感じだった。たぶんメイクのおかげだろう。
「女性よりの顔しててよかったよ。中性的なイケメンってすごい」
「違和感仕事してなさすぎー」
「本当に女子に見えてきました。スパイみたいですね」
スパイじゃないからね?
「今久太くんは久子ちゃんになりました」
「よろしくね、久子ちゃ……ぷっ」
「ちょっとすいません。笑いが……」
「……ごめん。笑っちゃいけないと思うけど笑いが」
「笑うな!」
「久子ちゃん。女子は女子らしくお淑やかに」
「笑わないで!」
何この声! 自分で出しておきながら気持ち悪い!
「もういい。俺は」
「久子ちゃん。私」
「……私はスイーツとってくる」
不貞腐れた俺は、スイーツを食べて気を紛らわすことにした。
スイーツビュッフェというだけあり、スイーツがたくさんある。マドレーヌとかフィナンシェ、マロングラッセとか。すごい種類がある。
そして、スイーツの王道というケーキの種類もすごかった。
ショート、モンブラン、チーズ、スフレとか。
パイもある。アップルパイ、ベリーパイなどなど。
うわ、タルトもすげえ!
俺は結構甘いものは食べる。パイとか好きなんだよ。
「来てよかったかもな」
女装してるけど。




