恐れる女子と恐れられる女子
空の家で勉強会をした後、みんなは空のことを怖がっていた。
触らぬ神に祟りなしというように、空を避け始めていた。らしい。
「空は無害だから大丈夫だぞ?」
俺がそう説得しても。
「無理! 消される!」
「ちょっと……近くに置くには危険ですよね」
それは否定できない。空自身は大丈夫だとしても、君清さんだ。三橋さんの時いじめられていると知ったら絶対に学校が崩壊していたと思う。
いわば、君清さんが爆弾で空が導火線みたいなものだ。
でも、空を避けてはほしくない。
「大丈夫だよ。俺が止めるから。空も止めると思うし、消される心配はないよ」
「だけれど……」
否定的な彼女たち。思わぬところから救世主があらわれた。
「なにをそんなに畏怖しているのだ? 人間は人間に畏怖するものなのだな。ククク……」
「梵ちゃん」
「何も恐れる必要はないだろう。西園寺という王は寛大で、強がりだ。傷ついても隠すと妾はふんでおる。父にばれないようにすればなんてことはないだろう。同じく王たる妾にはわかるぞ」
梵さんが、そう言ったのだった。
たしかに、空の性格上嫌なことがあっても抱え込む。君清さんにも誰にも話さない。自分自身で抱えて、落ち込んで、悲しんで。一人で解決しようとする節がある。
だから、傷ついても空は抱え込んでしまうだろう。
「空自身も抱え込む体質だから、大丈夫だと思うぞ。怖がる必要もない」
「そうだ! 人間の王など恐るるに足らぬ! 弱小な愚物に恐れる必要などまったくないのだ!」
……梵さんは一回君清さんの恐ろしさを知ったほうがいいと思うけどな。
「……わかった。じゃあ、避けないようにする」
「怖いけど、仲良くはしたいですしね。怖いけど」
二回言いましたね村上さん。
空から相談をうけた。
「最近、禊さんたちから避けられてるんだけどどうしたらいいかな」
という相談。俺は今日、解決したとはいいがたい。
君清さんのせいで恐れられたんだから、伝えると空は君清さんを怒りそうだ。
「き、気のせいだよ空。避けられてなんていないよ」
「そうかなあ……。今日禊さんに挨拶したら『あ、うん。おはよう。じゃ、私はこれで』って露骨に避けられてたんだけどなあ」
……そうだ! 禊さんを説得してないぞ!?
「う、うーん。お金持ちだと知って少し敬遠されてるんじゃないかな。お金持ちに嫌な記憶でもあるんでしょ」
「……だとしたらなんだか申し訳ないね。禊さんには悪い気持ちでいっぱいだよ。ちゃんと説明しなきゃね。わかってもらいたいし」
空はケーキを食べながらそう話していた。
君清さんのせいで恐れられてるなんて言えない。それをいったら空は君清さんに何を言うかわからない。
……でも、怖い気持ちもわかる。空自身は優しいし、気遣いもできる。スペック高い系女子だ。
優秀で、真面目で、優しくて。だからこそ、怖いのかな?
いや、違う。やっぱ怖いのは君清さんだ。
「……でも、ほんとうちのお父さんのせいで」
「そうだな。きみき……」
「やっぱりそうなんだ。久太くん。引っかかった」
しまった! はめられた!?
「い、いや、ちが」
「もう遅いよ。やっぱうちのお父さんなんだ。親ばかなお父さんが原因で……。よし」
そのよしというのはなんですか!?




