空の家で勉強会①
バイトでの仕事は単純で、ベルトコンベアから流れてくるペットボトルが倒れてないかという仕事だった。なんとも単純で、退屈な作業……。
そういう苦痛を乗り越え、今に至る。
俺は、今日講義で習ったことを纏めるべく図書館に行こうと思ったんだけど、システムがすごい。
図書館に入るには学生証が必要で、カードリーダーにかざす必要がある。そして、借りるには自動貸し出し機とかそんなのがある。
ちなみにここは本館だが、北館には書庫というものがあるそうだ。
「ふむ。禁秘の書物はなさそうだな」
「初めて来たけどすっごいねー!」
「おお、本がたくさんある……!」
と、経済学部の女子三人組をつれて。
俺は一人で帰ってやろうと思ったのだが、自分たちもやると言い出して、図書館でやることになった。
「西園寺さんと禊さんも誘えばよかったかなー!」
「美央ちゃん。西園寺さんと禊さんは学部が違うからすることないんじゃないかな」
「なんで経済学部にしなかったんだろうね。一緒に勉強したいなあ。西園寺さんと」
「……禊とは妾はしとうない。禊以外ならば学業に励むのもこれまた一興なのだが」
「……禊さんと何かあったのかよ」
「禊は昔から口うるさいのだ。間違えたら怒るし、正答でもおこるのだ。まったく、妾の姉上と来たらまあ」
と、梵さんが普段の愚痴を語ってる。俺はその後ろに目を向けた。
後ろには、禊さんがいたのだった。禊さんはゆっくりと足音を立てずにこちらに近づいてくる。梵さんの愚痴はまだ止まない。
「普段もそうなのだ。妾の一挙手一投足に茶々を入れてくる。口うるさいおなごよ」
「ふうん。口うるさいんだね。禊さんって」
「そうだ。ほかに……」
梵さんは声の主に気づいたのか、黙った。
そして、梵さんは振り返らず、そのまま前に向かって逃げ出した。
梵さんは職員の方からうるさいとの注意を受け、禊さんの説教を受けて、疲弊していた。
「それにしても奇遇だね! まさか会うとは」
「私たちは新聞をね。私の家新聞とってないからさ」
空って新聞とってないのか。
「というか、勉強なら私の家でしてもいいんだよ? 言ってくれれば私の家につれていったのに」
「……そこまで迷惑をかけるわけにはいきません」
「迷惑じゃないよ。大丈夫」
「西園寺さんは勉強とかいいの?」
「空は昔から勉強できるぞ」
「うーん。物覚えが早いんだよね」
それにプラスして運動神経もよく品行方正。本当に非の打ち所がない。しいて言えばたくさん食べることだろうか。たくさん食べても太らないし、可愛いんだけどね。
「なら、西園寺さんの家でやろうか。図書館とか喋りづらい雰囲気だし、家のほうがまだ気楽でいいかもしれないし」
そして、空の家に行くことが決定した。




