歓迎コンパ
俺は吉祥さんに声を掛けられ、新入学者歓迎コンパにいくことになった。
そして、今先輩が乾杯の音頭を取っている。酒を片手に。俺はまだ未成年だし、飲むつもりはないけれど、こういうつきあいも大切だろうなと思っている。
というか、久我山さんはもう飲んでるし。二十歳なのかな?
「お酒ってこんな味なんだ……。ぐふふ。知った」
俺は、みんなの様子を片目にうつしながら料理を取る。
焼き鳥とかお酒のつまみばかりだけど……。まあ、いいか。好きだし。
「小鳥遊君は飲まないの?」
「いや、俺未成年だし……ってか吉祥さんも未成年だろ」
「いいのいいの! 大丈夫だってこの時くらい」
よくないんだが。
「私たちはだーめ。はい、これは没収」
「あー!?」
村上さんナイス!
「むう。少しくらいいいじゃーん。私高校生の時も飲んでたよ?」
「もしかして頭痛いとか言ってたのって二日酔い?」
「そう!」
「…………もう、知らない」
といって、村上さんは怒ってどこかにいってしまった。
手のかかる友達を持つと苦労するね。
「というかお酒も持ってかれたし!」
吉祥さんは泣いていた。
俺はまた料理のほうに手を伸ばす。口に運び咀嚼する。この焼き鳥タレがいいな。美味い。この枝豆も程よい塩加減でなかなか。ついつい手が伸びちゃう。
こういうコンパ? みたいなのって俺はあまり出たくないんだよね。なんというか、慣れないというか、馴染めないというか。壁の花になってるだけだし。
だから、もう二度とこないかもな。付き合い悪いと思われるけど……。やっぱだめだわ。お酒の席はちょっと辛い。
「食べてる時が幸せに感じるよ」
こう、退屈な時間を少しでも紛らわすことができるから。
俺は料理を飲みつつ、ウーロン茶を飲み干した。
(視点代わります)
「ふむ。辟易としてしまったな。次へ参るとしよう」
梵は目の前にあるものは食べてしまい味に飽きた。
なので、違う席に移動して食べることにしている。梵は久太がいる席に移動した。
「小鳥遊よ。妾に料理を恵みたま……。小鳥遊?」
「……ぐー」
「ふむ。妾の前で隙を見せるとは肝が据わっておる。妾本来の力を取り戻せば一瞬で汝を殺すことがいともたやすくできるのだが、今は幸せに浸らしてやろう」
梵は久太の隣に移動する。
「妾の肩を貸してやる。存分に眠るがよい」
「うーん……」
久太が倒れこんだ。倒れこんだその先は、太ももだった。思いっきり倒れて、梵の膝に頭がのっかっている。
「な、なな、なあああああ!?」
慣れていない梵は叫んでしまった。
慌てふためく梵。それに追い打ちをかけるように空と禊がきたのだった。
「久太くーん。ちょっと一緒に外に……」
「梵。悪いけど……」
空と禊は梵と膝枕されている久太に目を移す。
「……梵ちゃん。な、なんで久太くんを膝枕しているの?」
「梵。人の彼氏に手を出したのか。帰ったら説教だからな」
「違う! 人間は話をすることができる動物である! お互い話し合えば何とかなるはずだ」
この後、誤解を解くのに三十分かかった。




