大学の友達関係①
北大の敷地内はとにかくでかい。北海道はでかい分無駄に敷地があるからでかいのか? 本州の大学にはいったことないからよくわからないのだが。
そして、今日も梵さんが隣に座っています。
「……汝。訪ねたいことがある。ここなのだが、妾の知能をもってしてもよくわからんのだ。優秀で博識なる汝ならわかるのではないか?」
「ここ? ああ、これはだね」
勉強にもついていけるようになって、北大にもちょっと慣れてきた。まだ友達は少ないけれど、なんか俺が噂になっているようだった。
現に後ろからも聞こえる。
「ねえ、経済学部に入ったイケメンって前の人じゃない? あとで握手してもらおうよ」
「ええ!? 迷惑じゃない? 見ず知らずの人に……」
「怒られたら私が責任を取るから! いこうよ!」
おい。
いや、別に怒らないけど……。空のいないところで女子と触れ合ってたらなんだか背徳感が……。俺は空の彼女だし、そこらへんは節操をもたなければ。
でも、空はどうだろう? 空も男子の間では噂になってたし……。握手してとか迫られたら握手はしそうだ。でも、空は優しいからそうするだけで、俺はそうしない。相手がやってるからいいだろうということは通じないはずだ!
「ふむ。理解できた。やはり妾の見る目は正しかったようだ。汝には力がある」
「ああ、そう……」
禊さんに教えてもらった通り、俺は聞き流すことにした。
講義が終わり、本当に握手を求めてきた。
「握手してください!」
「ええっと、ごめん。それは無理なんだ」
「そうだ。小鳥遊は妾と契約を結んで」
「いないぞそんなもん」
俺はやんわりと否定しているのにこいつは誤解を招きそうなことをいう!
「ほら、やっぱりだめだったんじゃん!」
「ガード高いんだね」
ガードが高いわけじゃなく空のいないところで空の許可なしに握手するわけにはいかんと思うからであって……。彼女がいなかったらしてあげてもよかったんだよ?
いや、決して俺は彼女という鎖に縛られているわけじゃなく、空の気持ちを守っているわけであってだな……。
「握手がダメなら連絡先交換しない?」
「ちょっと美央ちゃん!」
「連絡先もだめ、かな」
こういうのは徹底してやらないとね!
「ククク。なら、汝。妾を呼び出す呪文を教えてやってもよいが?」
「いらん」
なんだかこいつに教えると十分毎にメールを送ってきそうだ。
姉の禊さんなら考えなくもなかったがこいつには渡したくない。いや、ほんと不安要素しかないからな……。
たとえば、鏡の前で黒いコートを着た自分の写真を送ってきたりとか……。な、ないよな?
「そこをなんとか!」
「み、美央ちゃんそれはしつこいと思うよ」
「ううううう!」
「……汝。交換してもよろしいのではないか? 人間は交友関係が広いほうがなにかと徳があるだろう」
「……そうだな」
たしかに交友関係が広いほうがいいというのは頷ける。こいつたまにはこういうこと言うのか……。
「じゃ、じゃあ!?」
「わかった。いいよ。連絡先くらいならいいけど……」
「やったあ! 頼んでみるもんだよこれ! ああ、私は吉祥 美央っていいまーす! こっちのメガネっ子が村上 千紗っていいます!」
「俺は小鳥遊 久太……。あ、最初に言っておくけれど俺には彼女がいるから告白しようとかは……」
「彼女いるの!?」
「あ、ああ」
「まじかー! そりゃそうだよ! こんなにかっこいいんだからいないわけがないもん!」
悔しがる吉祥さん。
牽制のつもりで言ったから効果は抜群のようだ。
「で、相手は誰なんですか? この大学の方?」
「法学部の西園寺 空っていう女の子だ」
「まじで!? あの可愛いって噂の!? 美男美女カップル! 羨ましいなあ!」
吉祥さんは目を光らせて質問をし始めた。元気だなこの子……。




