大学生活始まりました②
学食にも、黒沢さんはついてきた。
俺の隣に座り、エヴァの碇ゲンドウポーズをしながらこちらをみて笑っていた。なんだよこいつ……。入学して早々変なのに付きまとわれてるよ……。
「ごめん、遅く……」
「空。よっす」
「……きゅ、久太くんもう友達出来たの?」
「友達……なのかなあ」
絆の契約ってなんなのかわかっていないんだからな。
「ククク……。妾は久太と絆の契約を結びし魔王、黒沢 梵なるぞ!」
「……あ、えっと、久太くんの彼女の西園寺 空です」
「なんだとっ!?」
黒沢さんは驚いていた。
「まさか、貴様らが魂の契約をしていたとは……。この妾でも見抜けぬ契約となると汝は聖女なのか!」
「聖女? 魂の契約?」
「気にすんな。中二病みたいだからさ。俺も絆とか魂の契約とかよくわからん」
「わからなくともむりはない。妾の魔力を含みし言葉には理解せざる力が働いている。むしろ、わからなくて当然なのだ。汝らは勇者ではないのだから」
いねえよ、この世界に勇者なんて。
「……なんか、ヘンな人と知り合ったんだね」
「ああ。ほんとにな」
俺は一つため息をつき、隣を見るとなんだかひょこっと顔を出している女の子がいた。カメラをこちらに構えて。
「むふふ。気づかれちゃいました」
「なんだよお前……」
「久我山 せせらです。今の話本当ですか。あなた方が付き合っているというお話!」
「え? ほ、本当だけど」
この身長が小さくてカメラを肩からぶら下げた少女。
なんか、小動物みたいでかわいいな。
「本当ですか! スクープです! イケメン彼氏と美少女彼女のアツアツカップル! 新聞に載せなければ! あ、わからないところあったら聞いていいからね! 私はこれでも二年生だから!」
あ、二年生なんだこの人。
でも身長小さすぎやしないか? 小学生と見間違うほど小さいんだけれども……。
「それにしても、おふたりはいつからのお付き合いで? よければ私に馴れ初めなんてものをぐふふ」
「……まあ、高校二年生の時に告白されてそこから付き合い始めました」
「わお。まあ、彼氏もこんな可愛い彼女に告白されたら受けないわけにもいかないもんねー! わかるよ、私も美少女がいるとついカメラを向けるんだ。美少女に頼まれたら断れないよねー!」
わかるわかると自分で納得して頷いていた。
「というわけで、写真撮らして彼女さん!」
「西園寺 空っていいます」
「西園寺……? あ、もしかして君民天堂の社長の娘?」
「はい。そうですが」
「社長令嬢ときて美少女! いいねえ、どんどん好物件だよ! 裕福で可愛いとなるとこれはもう名声と容姿は完璧だあああ! で、料理は出来る? 洗濯は? 掃除は?」
「人並みには出来ますが……」
「おっふ! スペック高すぎっ! 可愛くて、家庭の仕事をこなせて、社長令嬢……。彼氏さん」
「小鳥遊 久太です」
「小鳥遊くーん。いつ結婚するの? 学生婚でもいいんだよ? 別れないうちに結婚しちゃいなよユー!」
俺はその一言で飲んでいた水を吹いた。
け、結婚!? た、たしかにしたいけど空の気持ちとか、君清さんが許すかどうかとかさ、問題があるのにこの人簡単に言うな!
でもなあ、空のウエディングドレス、見たいなあ。
「……汝ら。顔がマグマのように赤くなっているぞ」
「まだまだ初心の心が抜けないようですなあ。キスしてる写真を収めようと思ったのに残念だよお姉さんは!」
といわれても。
「ふむ。魂の契約をしているなら接吻くらいどうってことないだろう? 見せてみろ。久太。空」
「「ええっ!?」」
「安心しろ。シャッターを押す瞬間まで気を抜かんから」
「さあ、したまえ!」
二人はキスをしろと迫ってきた。俺と空は、見つめあう。
「……じゃあ、する?」
「……わかった」
俺らは顔を近づける。
空の顔が近くなり、俺の体温がどんどんと上昇していった。
「って、恥ずかしいから無理いいいい!」
「ダメだ、恥ずかしい……」
俺らは顔を遠ざけた。




