京都で過ごす夏休み③
いい時間になったので俺らは家に帰る。
家では料理が用意されていた。結構な大人数がいる分料理の量が多い。
一つの皿をみんなでつついて食べる。
なんだこれ。サマー◯ォーズかよ。
「空ねーちゃんの彼氏だって!にーちゃんかっけーな!」
「かっこいー」
「こ、こら!服引っ張んな!」
小さい子に俺は集られていた。
女の子はこちらをみてうっとりしてるし、男の子は俺の服を引っ張って遊んだりしてる。まだ飯食べてる最中なんだけど。
「どう?お口に合うかしら」
「あ、美味しいです」
和食が多い。
冷奴がとても美味しい。あと、この魚の煮付け。甘じょっぱい味付けで俺の好みと合致する。
ご飯もふっくらと炊きあがってて超うまい。
「なにお前むすっと睨んでんの大輝」
「……別に」
目をそらす東城。
そして、また黙々とご飯に手をつけていた。無言で食べる東城と叔母さんたちと話しながら食べる西園寺さん。そして、子供たちと触れ合いながら食べてる俺と佳。
ご飯はある意味騒がしかった。
そして、食べ終わる。
食器を持っくため食器を持って台所まで向かおうとする。料理は台所で作ってるらしいから。
……でも場所わかんねえな。
「なあ、キッチンってどこ」
「ああ、知らないんだったね。キッチンはここでて奥に向かう二番目のドアんとこ。ついてってあげよーか?」
「頼む」
佳もついていってくれるらしい。
見た目に反してなかなか優しいよなあ。俺と西園寺さんの恋を応援してくれてるみたいだし。
……東城とは違って。
「んじゃ、ちょっと待っててねー、お子さんたち」
佳は立ち上がり「バイバイ」と手を振って俺の方にくる。
ペタッと隣にひっついて来た。あの、歩きにくいです。
「じゃ、いこっか!」
「お、おう」
俺は出ていった。
というか、女の子にこんな近くに来てもらえるって俺相当イケメンですかね?
食器を置いてまた居間に戻る。
居間ではお酒を飲んだ大人たちが笑いあっていた。
で、西園寺さんが絡まれてる。
苦笑いを浮かべながら対応をしていた。
「西園寺さん、疲れてんの?」
「あ、久太くん。まあ、少しね」
「ここは俺が対応しとくから少し休みなよ」
「いいの?」
「ああ」
俺は西園寺さんと席を代わる。西園寺さんはそのまま何処かへ行ってしまった。
そして、話題は自分たちの初恋と変わっていった。
「俺の若い頃はまあ、惚れたもんよ。クラスの可愛い女子だとかに告って見事玉砕。やっぱ恋はつれえんだなあってなあ。で、諦めずに告白したら今の女房が折れて付き合ったっちゅうわけさ!おめえさんも、諦めずにアピールしろよっ」
酒くせえ。
「俺なんかあれだ。高校ん時彼女に愛想つかされてなあ……。振られちまったんよ。おめえさんも空に愛想つかされんよう気をつけな」
「は、はい」
「それで俺は彼女だけじゃなく娘にも愛想がなあ…」
と、佳を見ている。あ、この人佳の父親か。
「俺は佳のことたっっくさん心配してんのに佳は俺のことを嫌ってるんだよ。俺はこんなに愛してるのに」
「そういうとこだよ父さん!親バカぶりでマジキモいからやめてくんない?」
佳の辛辣な一言が佳の父親に刺さる。
会心の一撃で君の父さん瀕死だけどいいの?ホイミ使った方がいいんじゃない?
「久太も私の父親に構わなくていいから。ここはもう出て子どもは子どもだけで遊ぼう」
「あ、お、おう」
と、佳に連れられていった。
連れられたところには東城もいる。入って来た俺に対し一瞥をくれるとまた子どもたちと遊び始めた。俺に関しては無視と威嚇を貫くらしい。
まあ、俺もあまり関わるほうじゃないから別に気にならないし、クラスの奴らよりはマシだ。
女子は好意的な目線を向けるも男子はもはや殺人鬼のレベル。超強えよ。あそこ。
「あ、風呂沸いてるから入る人から入っちゃいなさいよ」
「わかった。母さん」
佳のお母さんが、風呂沸いたと告げる。
「久太先入りなよ」
「いや、俺行く」
「久太に先入らせなって」
「はあ?なんでそいつに。俺が行くんだよ。邪魔すんな」
と、苛立ったようにでていった。
ほんと、なんなんだあいつ。
お風呂は一般家庭よりちょっとでかかった。
これ三人くらい入れるんじゃないかってほど。でも、一人ずつ入るらしい。
東城と佳は子どもたちと一緒に入るらしいが俺はただ、一人で入っていた。
一人という心地よさからちょっとだけ歌を歌っていた。
「高らかに笑い笑えーば、フレンズー」
けも◯フレンズのOPを小声で心地よく歌っていると、声が聞こえる。
「佳。一緒に入るって…もう高校生なんだから」
「いいじゃんたまには!ほら、私もう脱いでるんだから!」
「もう……」
……あれ?佳さん?
「じゃ、先行ってるねー」
と、ドアが開かれる。
そして、佳と目があった。
目があった瞬間にウインクされる。え?もしかして……。
「ほら!早く空姉ちゃん」
「わかったって。もう……」
そしてドアが開かれる。
西園寺さんと目があった。佳はお腹を抱えている。
「なっ……!」
「……よう」
「な、なな、なんで入ってりゅの!?」
「いや、もともと俺入ってたし、佳にもきちんと伝えたはずなんだけど」
と、佳に罪を押し付けた。
西園寺さんの非難の視線が佳に向く。佳は明後日の方向を向き吹けてもいない口笛を吹いていた。
「わ、わわ、私出るね」
「いいじゃんいいじゃん!仲良く入ろうよ!」
と、腕を引っ張って無理やり西園寺さんを湯船にいれる。それに続いて佳も湯船に入った。
あの、佳さんは何がしたいんですかね。
「……あ、あまりこっち見ないでね」
「見てもいいよー」
「佳〜!」
お、おおう。なんとも言えない。
俺も男子な訳だし、そして童貞なわけだし。自然と西園寺さんの恵まれている部分(どことは言わない)に目が行くのは自然の摂理。そう、仕方がない。だから不可抗力というわけだ。
あ、でもこれ以上見ると俺の理性もたないわ。
「なんで入りたくないの〜?昔は大輝と一緒に入ってたくせに〜」
「昔でしょそれは!い、今はもう高校生なわけだし男女混浴なんてしないし……」
「でもしていたんだよね〜?」
「むむむぅ〜……」
なんだか言い負かされている。
反論できない西園寺さんはそのまま縮こまった。そして、三人とも無言の空間が続く。
「……俺、そろそろ上がるわ」
「えー、上がっちゃうのー?もったいなーい」
「いいんだよ。俺にはちょっと…刺激が強い」
「ヘタレー!据え膳食わぬは男の恥だって言うのに!」
「逃げるのは恥だが役に立つんだよ」
だからここは退散させてもらいます。
やべ、鼻血でそう。




