三潟の理由②
そして、式典は始まる。
俺らが手を繋いで歩く。三潟の手は震えていた。怖いのだろうか。
「……お前にあとで聞きたいことがある。空と、堂島さんを含めて話そうか」
「……私に話すことはありません」
「俺にはある」
俺も、騙されていたのだろう。三潟という女に。こうも演技がうまいとは思っていなかった。
こいつは、多分わざと空から俺を奪った。なぜかはわからないがとりあえず西園寺家の反感を買うのが目的だったのだろう。
俺はその反感を買いたかった理由を知りたいだけだ。
「今から、小鳥遊 久太と三潟 杠の婚約披露式典を……」
「ちょっと待ってもらえないか」
司会の進行を止めたのは君清さんだった。君清さんは、舞台に上がってくる。そして、俺の肩をたたき、そして、三潟の肩も叩いていた。
もしかして、君清さんも何か知っているのでは? なんていう疑念が頭をよぎる。たぶん十中八九正解だろうけれど。
「私は西園寺 君清だ。婚約披露式典の前に、皆様に大事な事実を知ってもらいたい」
君清さんは紙をばらまく。それを拾う招待された客。それを見た客は、目を見開いていた。
「なんだね君は! いくら西園寺家の人といっても二人の邪魔をするんじゃない! 降りたまえ!」
と、一人の男性が怒鳴り声をあげた。
「これは失敬三潟家当主の三潟 小三郎様。婚約される前に皆様に知っておかせたい事実があったもので。あ、貴方もこれどうぞ」
と、君清さんが紙を手渡した。すると、小三郎と呼ばれた男性は顔が青ざめていく。どういった内容のプリントなのだろうか。
多分、あれが叩きのめすための証拠なんだろうけど……。どういった内容なのかは俺も知らん。
「こ、これをどこで……?」
「うまく隠していたつもりだろうけど私にはばれていますよ三潟様。貴方が働いた悪事は狡猾に隠されていました。私でも見つけるのが一苦労するほどに。だけれど、注意深く見てみれば気づくものですよ。この不正は。数字は嘘つきませんからな」
「数字は嘘をつく! 貴様が捏造しただけかもしれぬだろう。この資料が本当に私が行ったとでもいうのなら証拠を見せたまえ」
犯人はすぐに証拠を見せろっていう。典型的なやつだ。もう、これは確信できるだろう。現に、他の皆さんも納得しているようだしな。
「証拠がなければ話にならん。すべては裏付けが必要ということをわかっているのか」
「……なら、知っていそうな人に聞けばいいだろう。なあ、杠さん。貴方は、知っているよな? 不正のことを」
と、三潟に焦点があてられた。三潟は、俯く。
「杠。知っているだろう? 私が不正をしていないこと。証言したまえ。さあ」
三潟の父の小三郎さんが三潟に近寄る。汗だくで焦っている様子が見えた。そして、わかっているだろうなという眼光で脅しをかけている。
三潟は、考えていた。何かを葛藤しているような顔をしている。
「父は……」
三潟は目を見開く。
「父は不正をしています――!!」




