図書館での不幸①
刻々と日は過ぎていく。
来週に式典を行うと、三潟からも連絡が入った。俺は、ちょっとにやけが止まらなくて、少しにやけながら電話に出たら少し不審がられた。
そして、今は試験に向けて勉強をしている。
まだ第一次選考を受けてないし募集もしてないが、通った後で勉強しても遅い。なるべく早くを心がけるべきだから。
対策というのは早め早めがいいのだ。
「ふむ。ここ、まちがってるぞ」
「久太くん。ここも間違えてるよ」
図書館で会長と空と一緒に勉強をしていた。二人はハイスペックで勉強がとてもできる。幼少期の英才教育の賜物だといっていた。
そうそう、空は回復したというのを伝え忘れていた。式典で叩きのめすと伝えたら元気になったということは言っておく。
「小鳥遊って現代文が苦手なのか?」
「小説とかストーリーを考えながら読むのは好きなんですが筆者の思いを抜き出せというのが嫌いなんです。いや、真面目に現代文嫌い……」
「わかる。私も読み解くのは嫌いなんだよねえ。時間かけないとわからないんだ」
「そうか? こういうものは指定された文の前後に答えがちりばめられているようなものだろう」
「どれが答えで正解なのかわからないんですよ。数学とか答えが一つならまだしも説明文は答えが一つじゃないですよね」
「最終的には意味が同じであればいいからな。答えは一つのようなものだが」
まあ、そうなんだけど。意味が同じなら丸ということになる。要するに言い回しの問題だ。書き手と読み手の理解の差もあると思うけどね。
理解しやすい文章で意味を伝えるか。採点側にどう伝えたら伝わりやすいかを考えなければならない。それが嫌いなんだよ。
「意味を理解し、それを伝えるのは困難だからな。現代文は採点基準が一番高いといえる。言語は私たちにはなければならないものだし、コミュニケーションも言語だ。その分採点が難しい。小鳥遊が難しいというのも無理はない。だが、数学は答えが一つというのはまちがっているぞ。最終的に答えを決められてはいるが、数学の場合はどうやって辿り着くかも大事となる。なぜこうなるのかを数式によって説明せねばならんのだ。紙の試験では答えだけがあっていれば採点されるが数学者の場合は答えだけではだめなのだぞ」
うっ、確かに。そう説明されたらそうだと思う。
「その数学にも言語を使う。何にも言語は使うのだ。それゆえ言語は苦手でもマスターした方がいい。極端な話言語、文章というのは万物の基礎だ。仕事も、生活も言語なしでは生活ができない」
そうだ。だから現代文はこうして重点的に教えられてるのか。
「現代文嫌いだなんだと弱音を吐いていたら会社の後継者としては失格だぞ」
「……頑張ります」
「私も頑張る……」
空と俺は二人仲良く反省した。
「ふう。疲れただろう。少し休憩しようか」
参考書を閉じ、俺は大きく伸びをする。
ずっと集中して勉強したからか少しはできるようにはなった。
「コーヒーを持ってくるから空。手伝ってくれ」
「わかった」
「小鳥遊はコーヒーでいいよな?」
「はい。大丈夫です」
会長たちはコーヒーを取りに向かった。
この席には俺一人となる。空が向かった理由はコーヒーを三つ持てないからだろう。流石に往復しようとは考えてないと思うしな。
だからこうして一人なんだが……。
することないし、疲れたああああ!
ずっと集中しすぎたからか目が疲れた。
そして、トイレ行こうと立ち上がる。すると、椅子の足に引っかかって転んでしまった。その瞬間。
パリン。
と不吉な音が聞こえたと同時に、俺の視力はなくなった。




