やられたらやり返す……。
俺は空の家に行くと、食堂まで案内される。
「あの、俺を呼びつけた用事というのは何ですか?」
「ついに決まったということを君にも伝えたかっただけだ」
「つ、ついにって?」
「三潟を、貶めるときが決まったということをだよ」
君清さんは笑った。やっと解放されるということをつぶやき、不気味に笑っていた。相当手を焼いていたのだろう。あと、三潟に対する恨みもあったかもしれないが。
「日時は来週の婚約を発表する式典。私のところにも招待状が届いた。そこで、三潟を、終わらせる」
「し、式典?」
俺は聞いてないんだが。来週にあるの? 俺初めて知ったんだけれども。
「たぶん伝えてくるだろう。佳子ちゃんから学校に三潟がきたという情報が今は行ったばかりだから今日伝えようとしていたのかもな」
来ていたのか。
「それはともかく、私と四之宮家、堂島家もなんと招待されたその式典で、久太くんと三潟 杠との婚約を取り消させ、尚且つのぼせ上った三潟家を叩き潰す」
君清さんはシャンパンらしきものを飲み干した。
「三潟家もなかなかやってくれるじゃないか。空を泣かせるなんて万死に値する。西園寺家、四之宮家を敵に回した怖さを知らないうつけが。やるなら徹底的につぶす。三潟に情なんていらないな。ふふ。来週が楽しみだ」
三潟のせいで相当ため込んでいたのだろう。ブラックな君清さんが相まみえている。この人酒に弱いのだろうか。なんか顔が赤くなっているし相当酔っているな。
それはともかく、徹底的につぶすのと情なんていらないというのには激しく同意する。俺も嫌悪感を抱き、情を一切抱きたくない。三潟は手段を選ばないと前に警告されたけれど、西園寺家にはそれは通じなさそうだ。手段を選ばなくとも、最終的にはつぶされるから。
「数年前に流行った言葉でいうとやられたらやり返す。倍返しというやつだ」
「ほんとに結構前ですね……」
「いや、それじゃ甘いか。やられたらやり返す。千倍返しだな」
懐かしい。俺が中学の頃見ていたわ。そのドラマ。
「まあ、それはもういいとして、今日は食事でも一緒にどうかと誘った次第だよ。空も最近覇気がなくてね。仕事をさせてもミスばかりで激しく落ち込んでいる。空を元気づけてくれ。久太くん。私が慰めても効力がなくてね。母さん似で相当厄介だ。結構根に持つタイプだからな」
そうなんだ。
「千代も根に持つタイプだったな。十年前の貸しもきっちり返せという本当に厄介な姉だったよ。それでも、私は尊敬していたがね」
たしかに母さん昔貸したお金を返せといっていたような。母さんって記憶力いいし、ねちっこいんだよな。あれで。やられたらやり返さないと気が済まないタイプだ。自ら進んで煮え湯を飲むタイプじゃないし、我慢して煮え湯を飲むタイプでもない。
「そういう私も結構根に持つタイプなんだ。西園寺家はみな根に持つタイプが多いんだよ」
「……いっちゃあれですけど友達として厄介ですよね、それ」
「そうだな。借金取りみたいにずっと取り立てるタイプだから相当厄介だ。空は比較的マシなほうだがね」
俺としてはちょっと友達として敬遠するタイプです。
あのドラマも四年前ですからね。四年前はもう懐かしい領域となっています。




