三潟家は手段を選ばない
休日のとある喫茶店。俺は、三潟に呼び出しを受けていた。
「カプチーノおひとつ。……あなたは?」
「カフェラテ」
「カフェラテおひとつくださいまし」
目の前にはおしゃれに服を着こなした三潟。陽気な彼女の姿は楽しそうに感じた。
俺はまったく楽しくない。見た目は美少女だ。心躍るはずなのに、こうも踊らない。俺は、空のことが思ったより好きらしい。好きというか、大好き。今でも、空の泣き言が頭に浮かぶ。
「それで、何の呼び出しだよ」
「そう焦らずにいきませんか」
「焦る焦らないの問題じゃない。俺はお前といるのが嫌なんだ」
「あら、私はうきうきしていますのに?」
「嘘をつけよ。庶民が嫌いなお前が俺と一緒にいてうきうきするわけがない」
「いえ、してますわ。あの西園寺家に一矢報いることができるんですもの。うきうきしています」
相変わらずムカつく奴。本宮と同列ぐらいにムカつく奴だ。
「まあ、今回呼び出したのは婚約の件です」
「破棄するんならお好きにどうぞ」
「まあ。とんでもない。私があなたを手放すわけありません」
「ならなんだ。なかったことにするのか?」
「ふふ。それもございません」
不敵な笑みを浮かべていた。勝ち誇ったように見下してくる。俺は、早く帰りたいとその一心でいた。
「婚約というか、結婚に関してです。誕生日はいつですか?」
「……黙秘権を行使する」
「まあ、身辺調査をさせればわかることなんで答えなくても大丈夫ですよ」
「……三月十七日だ」
「となると……卒業してからとなりますね。待ち遠しいです」
俺としては来てほしくないのだが。
「では、四月に結婚式を挙げることにしますね」
「ちょっと待てよ。俺は結婚式には参加しないぞ」
「新郎がいなかったら何も始まりません」
「そうだな。だから俺は結婚式には出ないぞ」
「当日どんな手段を使ってでも出させます」
すると、三潟は立ち上がり、俺のそばまで来ると、耳にまで顔を近づけてくる。
「三潟家は手段を選びませんから。ご注意を」
警告と取れるメッセージを囁いてきたのだった。俺は、すぐに距離を取る。怖い。そう思ってしまった。手段を択ばないというのは怖いもので、まるで本宮の時と同じような目に遭っていると感じている。
「愛がない結婚にはなりますが……。私はきちんと働きますし、不自由はさせません。所詮はあなたは庶民なのですから、はたらかずに部屋でぐうたらしていてもよろしいですから」
そう、ほくそ笑んでいた。
金を持っている者はこうも鼻につくのか? こいつに対する怒りも、積みあがっていく。
「どうか、今後ともよろしくお願いしますね。きゅ・う・た・くん」
反吐がでそうだ。




