恥辱の風になって
昨日はひどいことを言ってしまったと思った。あいつのためになればと思っていったのは事実だけれど。
「なーに悩んでんだよ久太。お前らしくねえぞ?」
と、背後からつめたーい缶コーヒーを頬にあてられた。振り返ってみると立花が笑いながらカフェオレをもっていたのだった。
「何悩んでんだよ。俺に相談してみろ!」
「……昨日友達にひどいこと言ったんだよ」
「そうなのか。じゃあ、久太にひどいことを言わせた友達をぶん殴ればいいんだな!」
「なんでそうなる!?」
話が飛躍しすぎだろ! なんて心の中で突っ込んでおいた。
立花ってヤンキーになってから脳筋になっていないだろうか……。というか、すぐにそういう考えになるって大丈夫なのか? 心配だと思う。
そりゃ幼馴染だから当然というか? 昔は立花を姉のように慕っていたから、今もそれが続いているとかな。
「だって久太を落ち込ませるような奴ってろくなやつじゃねえだろ?」
いや、ろくなやつじゃないって……。言われてみれば不登校だから碌なやつじゃないかもしれないけど! 俺はそう思ってないよ? 世間一般がそう思ってるんだからね?
「俺は久太に笑ってほしいんだよ。だからお前の笑顔は俺が護る!」
「ああ、ありがとさん」
「うっ……。笑顔がまぶしい」
「俺は太陽じゃねえから眩しくねえよ」
やっぱかっこいいなあ。俺も、男としてはこうなりたかった。立花は女だけれどね。というか、本当に立花のほうが男より男してるよ。生まれる性別間違えてるような気がしなくはない。
だって、しぐさに女らしさってないからね……。座るときは胡坐。好きなものは肉。とくにカツが好きらしい。がっつり行けるのならなんでもいいとか。そして、極めつけの一人称が俺ということ。もう男でいいんじゃないの?
「久太は俺にとっての太陽だ!」
「そんな恥ずかしいことよく言え……」
ふと、今までの言動が、頭をよぎった。
……俺って結構臭いこといってないか? 待ってくれ。飛騨を説得したときとか、那智ちゃんを勇気づけたときとか、俺、結構いいこと言ったように見えて恥ずかしいこと言ってるのでは……?
思い出すと恥ずかしさが止まらない。
「な、なんか顔まで赤くなってんな! 照れてんのか!」
「ち、ちが……」
あああああ! 無意識って怖え! 俺、無意識でかっこつけたようなセリフいってんの!? 刃が浮きそうなセリフを言ってんの!? 死にたい。本当にやめて。俺の意識ストップ!
こう冷静になって考えるとそうとう俺キザなこと言ってる。イケメンだから許されたとはいえ……。イケメンでもこういうのって許されるの?
「とうとう俺に乗り換えるか。西園寺と別れて」
「……それはしない、けど」
「しないのか……」
立花がなにか落ち込んでいる。俺も、すこしばかり落ち込んでいる。もう、穴があったら入りたい。そのまま埋め立ててお墓にしてもらいたいものだ。
空。私のお墓の前で泣かないでください。そこに私はいません。
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