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『飛騨が島村を殺した』②

 「島村が死んだ理由は階段から落ちたからだ」


 それは知っている。階段の下で倒れていたらしいから。


 「そして、運の悪いことに飛騨は落ちる瞬間を見てしまったんだ。そして、倒れた島村にかけより、声をかけたんだが返事はなく、なんだか自分の手が湿ったような感覚があって手を見た。するとべっとり島村の血がついて、つい怖くなってその場から逃げ出したそうなんだ」


 手にはべっとり血が付いたまま。そのまま走るところを見られたら――?

 そのあとの結果が目に見えた。


 「……血がついている手。それを見られたら犯人だと思われるんじゃないか?」

 「そうだ。だから、一番の容疑者が飛騨だった」


 容疑者となってしまった飛騨。


 「そのことがストレスになったんだが追い打ちがまたきたんだ。島村が息を引き取ったと学校に連絡が入ったそうだ」


 なるほど。つまり、人殺しとして認識されることになったんだな。

 それがいじめに発展して……。最終的に人間不信にとなったんだろう。


 「それで、飛騨は一気に人殺しといわれるようになった。クラスメイトや先生方からの疑いの目。周りからの誹謗中傷に耐えきれなくなったのかあまり学校には来なくなった。だけれど人間不信にはまだなっていなかった」


 その時点ではなかったんだな。


 「家に引きこもっても誹謗中傷は届く。家のポストには『死ね殺人鬼』と書かれたカードまではいっていたそうだ。……ただその書かれていたカードが遊〇王の『死者蘇生』というカードだったんだけどな」


 ……なんでそれに死ねって書いたんだろう。死んで復活しろってことなのだろうか。だったら死ぬ意味なくない? なんて思ってしまったのは伏せておく。


 「まだそれもよかったんだ。だけれど、人間不信というか怖がることになった原因ができてしまったんだ。それは本当に殺されそうになったということだ」


 ああ、それは確かにコワい。俺も、本宮の関係者に殺されそうになったことがある。俺はまだ気にしていなかったし、西園寺家という後ろ盾があったから怖くなかったけど……。本当は怖くて夜も眠れないんだろうな。


 「島村のことが好きだった男が家に入ってきて殺そうとしたそうだ。飛騨は交番まで全速力で逃げて助かったらしいが、それがきっかけで人を怖がることになったんだ」


 そりゃそうだ。いつ殺されるかわからない。島村に好意を抱いていた人がいつ自分を襲ってくるかわからないものだ。


 「そして、今度は人間が嫌いになった原因だ。あの後、すぐに事件の真相がわかったそうだ。島村が足を滑らせて階段から落下……。考えてみればわかることだったんだが突き落としたなら普通手のひらに血はつかないんだよ。血が付くのは血が付いたところを触ったから。階段にも血痕があり突き落とした犯人がその場からすぐに立ち去らず一回抱き上げたことはおかしいと判断されたらしい」


 なるほど。真相がわかって、そのあとどうしたのだろうか。


 「真相がわかって、そしたらクラスメイトのやつらの態度が一変したそうだ。『お前はそういうことするやつじゃなかったな』って。そのことが原因だよ。都合悪いときには信じて、都合いいときには信じる愚かさに気が付いたんだろうな。俺は最初から弁護していたけれど、多勢に無勢だったから意味がなかったしな」


 手のひら返しをされたら、人間が嫌になった。たしかに流されやすいという印象だ。よく言えば周りの意見を取り入れることができるともいえる。だけれど、都合いい時には信じないというのはあからさまにクラスの奴らが悪い。


 「だから信用しなくなったんだよ。すぐに意見に流されるから俺以外の人間の言葉は信用ならないってな。たまにクラスの奴らが謝りに来てるけどそれも受け付けてないみたいだし。あいつはもう俺以外望んでいないのかもな……。いや、俺も望まれてないのかもしれないな」

 「そんなことないだろ。飛騨はお前の言うことなら信じるんだろ? なら望まれてる。お前は飛騨の唯一の拠り所なんだからお前がしっかりしてないと飛騨は何を信じればいいのかわからなくなるぞ」


 その時だった。リビングのドアが開かれたのは。

 そして、開いた先にいたのは……飛騨だった。







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イラストレーターとユートゥーバー 新しいラブコメ小説を投稿してみました。是非とも読んでみてください。
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