『飛騨が島村を殺した』①
飛騨と話してみてわかったことはなんだか疑り深い性格ということ。あと、初対面の人間はあまり信じていないことだった。
自分で話してみても、信用しない人のほうが多そうだ。飛騨の言動から察するに俺も恭一郎の紹介がなければ話すことはなかったと思う。
ただ、一つ言えることは。
「……引きこもったのって、人が怖いからじゃね?」
人間不信ということは人間を信じられなくなっているということだ。
信じられなくて、怖くなって、会いたくなくなって。たぶんそういうことなのだろうな。俺が察した限りだと。
「よくわかったな。まあ、もともとあいつはそういう性格じゃないんだけどさ」
「?? 昔、なにかあったのか?」
「……久太にならいいか。ちょっと俺の家にこい」
といって、恭一郎の家にいくことになった。
恭一郎の家には数度行ったことがある。その家にきた。恭一郎は妹も姉も弟も兄もいない一人っ子で両親は共働き。いつも家では一人らしい。だから内緒話には都合がいいんだ。
「まあ、適当に座ってくれ」
と言われたので遠慮なくクッションを下に敷き座る。
目の前に茶請けが置かれたので俺はそれを手に取った。
「まあ、最初に話しておくとあいつと俺はお前より付き合いが長いんだ」
「となると、中学からか」
「ああ。中学一年生の頃あいつが転校してきた。爽やかなやつだったよ」
飛騨が爽やかと……あの風貌からは想像ができないが。
「俺が仲良くなったきっかけがゲームだ。同じゲームをやっていて、通信プレイで遊ぶようになってな。仲良くなるのはあっという間で親友と呼べる間柄になるのも一瞬だったよ」
いわゆる同じ穴の狢ということだ。何か一つ共通点があれば仲良くなれることが多い。友達の作り方も大体そんな感じなのではなかろうか。
「俺らが仲良くゲームして、ある日事件が起きた」
「中学生の頃か? 高校の頃か?」
「高校のころだ。事件が起きた時は久太たちとはすでに交流があった時期だな」
まあ、出会ったのが高校一年の初期のころですしね。
「あの時不機嫌というか、あまりしゃべらなかった時期があるだろ。それがその事件の直後だ」
「あー、あったなー。不機嫌でしゃべらなかったとき。誘いも断っていたしな」
あの頃の恭一郎は怖かった。何かに憤怒していて、とても関われる雰囲気ではなかったから。
「その事件がきっかけであいつは不登校になったんだよ」
飛騨が不登校になった事件。あいつが不機嫌になった時期にあった出来事。頭の中で記憶を整理しているとある名前が思い浮かんだ。
俺も、噂で聞いた話だが。
「飛騨は島村を殺した……だったか?」
「そう。その話。知っていたのか?」
「あくまで噂だけどな。というか、その時期学校に警察とかも来ていたから島村って子が死んだのは本当だと思うけど……。あの飛騨が関わってるとは思ってなかったよ」
「……まあ、結論を言えば飛騨は犯人じゃなかったんだけどな」
「だろうな。警察も馬鹿じゃないから犯人はすぐ特定できそうだし、犯人だったら飛騨は家にはいないもんな」
この国の警察もそこまでバカじゃないから、証拠だのなんだの集めて犯人はすぐ特定できると思う。
「そうだ。改めてその事件を振り返ってみるか。そして秀太が不登校になった理由もその中に入ってるからな」




