不登校を説得に行こう①
「一つ、頼みたいことがある」
朝一番に頭を下げてきた恭一郎。何やら深刻そうな顔で俺に頼みごとをしてきていた。何があったのかは知らないが重大なことなのだろうか。
「どうしたんだよ」
俺が訪ねると頭をあげた。
「実は、ある一人の不登校を矯正したい」
「不登校?」
不登校と聞いた。なぜ恭一郎が俺に頼むかも疑問だが、なんで恭一郎が不登校のことを気にかけているんだろうか。
ふつうはセラピーの方とかに頼むんじゃないだろうかとも思うし、相談するのも先生方やセラピーの方だと思うんだが。
「先生には相談したくない。俺の大事な親友だったやつなんだ。俺の手でやってやりたいんだ」
「とはいっても、俺も力になれないと思うけどな。特に不登校児なんて」
不登校というのは大体のケースが面倒だとかそういう理由だ。もちろんそちらも学校に来いと説得するのは困難を極めるが、まだ、もう一つケースがある。それは嫌なことがあってだ。
いじめられて、周りが怖くて、裏切られてとか様々な要因がある。そちらを解決するにはその要因となった人物や物を排除しなければならない。また、不登校児事態にも心のケアをしなければならないからそっちは本当にきついぞ。
「ダメか?」
「難しいぞ」
「そうか……。じゃ、俺だけでも説得してみるよ」
といって恭一郎は残念そうに廊下を歩いていった。
恭一郎の友達が不登校というのは恭一郎にとっても面白くない話だろうに。だから、俺もそういうのは面白くない。
「待てよ恭一郎。俺は難しいと言ったけれどやらないとは言ってないぞ」
「……やってくれるのか?」
「やるよ。任せとけ」
任せとけと大口をたたいたから、きちんと責務は果たさないとな。
放課後。俺は恭一郎と一緒にその不登校児の家にきた。
インターホンを鳴らすと、女性が出てくる。
「恭一郎くん。こんにちは」
「こんちはおばさん」
「今日はどうしたの?」
「いや、秀太の説得に来たんす」
「……あの子、もう、無駄だと思うわよ」
女性が諦めたような目で二階の部屋を見上げていた。
「……あら、そちらの方は?」
「あ、こっちは俺の友達の小鳥遊っす」
「ど、どうも」
軽く会釈をする。
「まあ、中に入っていきなさいな。大したおもてなしは出来ないけどあの子は恭一郎君なら降りてくるから……。読んでくるわね」
といって、俺と恭一郎の二人はソファに座らされたまま放置されていた。
いたって普通の住宅で、結構綺麗だった。埃が一つも発見できないような綺麗さを誇っており、なんだか物に触れるのにも気が引ける。
だからずっとなにも触らず、無心でずっと座っていた。
すると、ドアが開かれる。
ドアが開いた先には、ぼさぼさ髪の男の人が死んだ魚のような目でこちらを見ていた。




