俺の彼女のほうが可愛い
夏休みが明けた――
夏休みが終わるといろいろと始まってくる。就職組は履歴書を書いて送るのが今の時期だ。また、短期大学や専門学校も今の時期に申し込みがあり、いろいろと進路が立て込む時期となる。
「ということで、不肖桶川 光。見事春と付き合うことになったっす」
いつも通りご飯を食べているとそういう発表を受けた。
俺は宮古さんから連絡を受けたから知っているが隆たちは初耳だろう。四人から拍手が巻き起こった。
「おめでとう。光くん」
「めでたいでござるな」
「おめっとさん」
でも、一つ心配なのは恭一郎だ。以前にも俺だけモテないとか言っていたから、今回もまた傷ついていないか心配になる。
見たところ気にしたようじゃないけど……。心の中では傷ついていたり……。
「これで残るは俺だけか」
「……恭一郎。私も彼氏いない」
「ああ、じゃあ、残り二人だな」
「……うん」
小寄と恭一郎は笑いあっていた。
だ、大丈夫なのかな?
「で、付き合ったんなら俺らと食って大丈夫なのかよ。飯は彼女と食ったほうがいいんじゃねえか?」
「あ、春もこっちにくるっていってるっす。久太に改めてお礼がしたいって言ってたっすから」
「別にいいのに」
「春はやられたらやり返すやつなんすよ」
ああ、そうなの。つまりいじめたらやり返されるのね……。
「昔から受けた恩義は返す律儀なやつっすよ。ほんと、今も昔も変わらないってのは素晴らしいっすねえ。あ、そうそう、春の好きなものは甘いもので甘いものを与えた時の春は可愛くてかわいくて仕方ねえっす」
光の惚気が始まった。
すっかり気持ちが高ぶっているらしい。それほど嬉しいんだ。やっぱ光も好きだったんだな。
「家事も出来て、気遣い心配りも完璧。人のしてほしいことをしてくれる……あれ? 完璧じゃないっすか?」
「はん。うちの空も負けてないぞ。料理はおいしいし俺のことも気遣ってくれて俺のためにけなげに頑張ってくれる。俺も空に助けられてばかりだし、困ったときに助けてくれる優しい奴だよ」
「きゅ、久太くん? な、なにいってるの?」
俺が空をほめちぎったら空がなんか顔を赤くしているがそんなことしらない。うちの空が一番かわいくていちばんやさしい。こればかりは譲れない。
「いやいや。たしかに西園寺さんも可愛いくて優しくて、凛々しくてかっこいいっすよ? でも、春はそれに負けず容姿も優れ、恋愛に慣れてない雰囲気を醸し出して、なにをしていいかわからないような初心なんす。可愛さではこちらのほうが上っす」
「いやいやいや。空は俺のことが好きだけど一歩踏み出せない。強がっているけど内心はドキドキなんだぜ。必死に照れ隠しをしているのが一番だよ」
「へぁ!?」
光は笑いながらこちらを見る。
俺らの間に飛び交う火花。お互い自分の彼女のほうが可愛いと譲らない。お互い譲る気はない。俺は絶対折れない。なんてったって空のほうが可愛いからな!
だが、宮古さんも可愛いのは事実。勝負は水平線を辿りそうだ……。
「「俺の彼女のほうが可愛い!」」
「「もうやめてえぇぇぇ!!」」




