挑戦してみるが大事
八月一日まであと五日。
今日は空も一緒に来てもらっていた。
「西園寺さん。よろしくお願いします」
「うん。よろしく。宮古ちゃん」
「そ、その、春でいいですよ」
「わかったよ。春ちゃん」
照れながら春でいいと促す宮古さん。結構かわいい。
「それで、勇気がほしい……んだっけ」
「は、はいっ! 私、人一倍臆病なもので……その、振られたらどうしようとか考えてしまうと足がすくんで……」
ネガティブ思想。俺もよく思うことだが。それについてはいいたいことがある。
「怖くて進めないのならまあ、進歩はしないよな」
「そうだね。誰だって怖いものだしね」
そのときだった。
「おお、小鳥遊と空」
「お兄ちゃん」
俺を呼ぶ声が聞こえる。後ろを振り向くが誰もいない。誰もいないかと思いまた向き直そうとすると、視線が辿っていった先には那智ちゃんと会長がいた。
「那智ちゃん。久しぶりい」
「うん。お久しぶり」
「あ、佳子。久しぶり」
「ああ。ご無沙汰しているな」
そういえばここ最近会長の姿を見ていなかったな。
那智ちゃんは俺に近づいてくると、俺の袖を引っ張る。俺は那智ちゃんに視線を合わし、何か話したげにしている那智ちゃんにどうしたのと聞いてみた。
「那智、未来怖くなくなったよ。これも全部お兄ちゃんのおかげ。ありがと」
と、ほっぺにキスをしてくる。ほほう。なかなかやるな。男をたぶらかす天才だな。
「あ、あ、ああ、し、四之宮会長」
「ん? ああ、宮古か。初めまして。私は元生徒会長の四之宮だ」
「初めましての割には名前を憶えてるんだ……。全校生徒の名前を憶えてるの?」
「バカいえ。学校に何人いると思ってる……。小鳥遊の交友関係を調べていたらでてきたからな。なんとなく覚えているだけだ」
「俺探られてたんすか……」
「君清さんに言われたからな」
なるほど。過保護なあの人ならやりかねないな。付き合う人の交友関係を調べるのはあの人ならやりそうだ。
「それで、三人は何してるんだ?」
「えっと、宮古さんの手伝い、かな」
「そうなのか? 何を手伝ってるのかはさっぱりわからんが……。勉強か?」
「まあ、そんなもんです」
「なるほど。では、私も手を貸そうか?」
「いや、お言葉だけもらっておきますよ」
「そうか。力になれずすまんな。ほら、那智行くぞ」
「……嫌だ」
那智ちゃんは俺に抱きついたまま離れようとはしなかった。会長が睨むもそれに臆せずさらに力を強めてくる。はあ、と会長はため息をついた。
「わかった。小鳥遊。すまないが数時間ほど那智とかまってやってくれ」
「……わかりましたよ」
本当に会長は妹に甘いな。俺も人のこと言えないと思うけど。
「勇気を出すために必要なのは自分へのご褒美だよ」
「ご褒美?」
「たとえば試験の点数がよかったらケーキを買うとか、そういうやつ。自分にとって好きなもの、嬉しいものが努力の先にあるとしたら結構頑張れるんじゃないかな」
ああ、テストでいい点数だったら漫画を買うとかそういうやつか。俺も結構やってる。なにかしらあると結構やる気が出るよな。
「宮古さんの好きなものは?」
「え、えっと……ちょ、チョコレート、です」
「なら告白成功したら高級チョコを買って食べるとか、そういうこと」
宮古さんは真剣にメモをとっていた。几帳面な性格なんだな。
「ほ、ほかには……」
「俺からもいいか?」
空だけがアドバイスするのはよくない。俺もださなければ。
「やる気出すというか、あれだ。励ましの言葉を贈る。マザーテレサって知ってるだろ?」
「な、名前だけは……」
「そのマザーテレサがこういってんだよ。神は私たちに成功を求めていない、挑戦することを望んでいるだけと。だから、まあ、成功云々じゃなくまずは挑むということが大切なんだと思うぞ」
だからまずは成功にはこだわらず挑戦してみるということが大切だ、そういうことなのかもしれないな。
「……挑戦、ですか」




