怒った佳
「久太兄さん。久しぶり」
「久しぶり」
夏休みのある日、杏美とお爺ちゃんが遊びに来ていた。
「お爺ちゃんも、ご無沙汰しています」
「そんな他人行儀じゃなくていいんだぞ」
俺の頭を撫でるお爺ちゃん。いや、まだあって二回目だし、まだ慣れないというかね。
初対面に近い相手に他人行儀じゃなくてもいいとかそれは無理だ。俺にはまだできない。会うだけでも結構緊張してるのに。
「まあ、仕方ないか。ぼちぼち慣れてけばいいさ」
「すいません」
「いいんだよ。わしは偉いというわけじゃないしな」
といって笑いながらリビングのソファに腰を掛けていた。
「久太兄さんと会うのも二回目だね。私には慣れたかな?」
というと、ピンポーンとインターホンが鳴る。
俺が扉を開けるとそこにいたのは佳だった。後ろには空がいたのだった。だけれど、なんか、佳の様子がおかしい。怒ってらっしゃる?
「あ、あの。い、いらっしゃい」
「久太。今すぐあの女と別れなさい」
「あの女?」
あの女って誰だ?
見当もつかない俺にしびれを切らせたのか、それともキレたのか壁を思い切り叩いていた。
「図書室で楽しくやっていた女だよ!」
「図書館……? ああ!」
宮古さんの事か! って、俺は付き合ってないんだけどな……。
「俺、宮古さんとは付き合ってないよ?」
「嘘つけ! 空姉ちゃんはこんなに傷ついてるんだよ! ね、浮気の現場見たんだもんね?」
空が頷く。
俺は浮気なんて断じてしていないぞ!
「何か誤解してないか? 俺はしてないぞ……?」
「でも空姉ちゃんが見たんだよ! 久太がその宮古さんと楽しく話してるとこ!」
「いや、あれは……。っていうか立ち話もなんだから中に入って説明するよ」
「……ごめんなさい。私、はやとちりしてた」
一から百まで説明して、納得してくれたようだった。
「空も、俺は告白する勇気をくれって宮古に頼まれたからやってるんだよ。誤解させたのは悪かったけど……少しは俺を信じてください」
「ご、ごめんなさい……」
ベットに深く寝転がる。
俺が寝転がると上に誰かが乗ってきた。その姿は瑞穂と杏美だった。
「って、女の子二人に乗られてる! お姉ちゃんで遅れてるよ! ほら、さっきの罪滅ぼしにのっかってあげないと!」
「ええ!?」
って、重いよ。女子二人分はさすがに重い。
「久太兄さん。この人たち誰?」
「俺の……彼女の……ぐぅ……重い」
「兄さん。瑞穂たちは女子だよ? 重いなんていったら傷つく」
「お前は傷つくようなタマじゃないってことはわかってるんだよ……いいから、降りろ」
無理やり俺の上から降ろす。
「改めて、俺の彼女の西園寺 空とその従妹の」
「南条 佳でーす。よろしく!」
改めてみると本当にギャルっぽいな。優しいところはあるけれどギャル。なんで金髪なのだろうか。なんで金髪にしたがるのかよくわからない。
というか、金髪って似合う人もいれば似合わない人もいるからな。俺は似合わないほうだ。
「えっと、私は小鳥遊 杏美です」
「同じ姓…ってことは従妹なんだ」
「はい」
「そうなの。あ、杏美。一緒に遊ぼっか。ふたりきりにしてあげよ。二人きりになると面白いもの見れるかもしれないから!」
「……! わかった! 遊ぼう!」
面白いものってよくわからないけどろくなものじゃなさそうだ。
そういって、佳はみずほたちを連れて出ていく。
「あ、あまり激しくしないようにね! 下のお爺ちゃんまで聞こえるから!」
「何言ってんだ!?」
あの、その段階までは未だにイケそうにないからね?




