宮古さんのヒーロー
翌日。俺らは図書館で恋愛について語っていた。
瑞穂から借りた少女漫画をもってきている。少女漫画みたいな恋はないが、これで恋愛する勇気を出してもらおうと考えたのだ。
「……なんか、この男の人あまり好きになれません。俺様……って自分は何様のつもりなんでしょう……」
「そ、そうか」
どうやら宮古さんは俺様系が苦手らしい。
「でも、恋する気持ちはわかります! 私も……小学校から長い片思いをしているので……」
「結構長いんだな」
「はい。昔からかっこよかったんです。私にとってのヒーローなんです。光は」
「そうなのか。まあ、今ではヒーローっぽくみえないけどな」
「いえ。その……私からしたら今もヒーローに見えますよ。光は私の好意に気が付いてますけど……あえて知らないふりをしてます。私が傷つかないよう、私がオタクと付き合ってるという被害をかぶらせたくないのしょう」
「知ってたのか」
「わざとらしいので誰だってわかりますよ」
くすっと宮古さんは笑う。
前も恭一郎が好意を向けてるといったときにも動揺はしていなかったから、気づいているのだろう。鈍いというわけではなく、気づいてあえて無視しているといった具合にだ。
「私、昔からいじめられやすくて……。いつもいじめから庇ってくれるのが光でした。
中学校の頃、光がフィギュア収集にはまりだしてある日それが原因でいじめられたんです。
『キモいフィギュア集めているヲタクの幼馴染なのよこいつ。同類なのねきっと』なんて言われて……。それからです。それが原因して高校の時にはあまり話さなくなりました」
「光なりのやさしさなんだろうな。不器用だろうけどあいつらしいな」
「だけれど、高校では違います。今は小鳥遊さんがいて、西園寺さんがいて絹瀬さんもいます。心強い友達がいるので光も、もう私のことは無視してほしくない。そう思って決意したのはいいのですが……」
「勇気が出せないと……そういうわけか」
「お恥ずかしながら……」
話は理解できた。光は未だにその優しさを貫いていて、終わらせることをしない。まだ、完全には俺らを信頼していないのか? 俺はこれでも影響力は強いと思っているのだが。
俺だって宮古さんを守ることはするし、竜太郎も空も協力してくれると思うのに。あいつはなんでやめようとはしない? もしかして宮古さんとの関係を断とうとしているのか?
いろいろな推測が頭の中に渦巻くがそれを無視して、俺は次の少女漫画……ではなく、少女向けのライトノベルを勧めた。
「あれって……」
図書館の窓からのぞくのはなんと空と非モテ集団だった。
「久太氏!? なに宮古氏に浮気しているのでござるか!?」
「見損なったっす! 久太!」
「いや、あれって本当に浮気なのか?」
非モテ集団は陰からのぞいている。そっと見ているのに対し、空はというと。
膝から崩れ落ちていた。笑う久太に空はショックを受けた。自分は好きではなく、本当は宮古産のことが好きなのだと。信じていたものに裏切られたように。
「絶対あれは浮気っす! 甲斐性なしっすね!」
「違うと思うけどな。少女漫画とか貸さないだろ普通」
「じゃあなんなんすか! あれは!」
「さ、さあ。あとで俺から聞いてみるよ」
空の不安と非モテ集団の怒りは続く。




