勇気をください
夏休みに入り、俺は宮古さんに呼ばれた。
待ち合わせをしている喫茶店で一人待っている。コーヒーを啜っているとドアを開ける宮古さんの姿が見えた。
「あっ、小鳥遊さん。お待たせいたしました!」
「いや、待ってないよ」
何の用かは知らないがとりあえず来てほしいと頼まれたので俺は来てみたのだが。
結構おしゃれしていて可愛い。空には一歩劣るがそれでも美少女と名高い宮古さんだ。俺から見ても普通に可愛いと思える。
「それで、用って?」
「そのことなんですが、喉が渇いたので飲み物飲んでから出よろしいでしょうか」
「いいよ」
宮古さんはカフェオレとホットケーキを注文し、俺もコーヒーのお代わりを注文する。
数分後、カフェオレが運ばれてきた。
「ここのカフェオレ好きなんです。甘くて……とても美味しいんですよ」
「そうなのか? 今度頼んでみるよ」
「はい。ホットケーキも美味しいので今度西園寺さんと一緒に来てみてはどうでしょう。放課後デートとかには最適だと思いますよ」
たしかに。放課後デートならここの雰囲気はいいかもな。
「そ、それで、用件というか相談なのですが……」
「相談?」
「はい。あ、あの……私が光を好きなことはもうご存知……ですよね?」
「ああ。そういや去年の学校祭で言ってたね」
「はい。……その、この夏休み、私は告白をしようと思いまして……」
「……ああ、手伝ってくれと」
「……はい」
顔を赤面させてぶくぶくとカフェオレを泡立てる宮古さん。
告白するということだ。それはめでたいことだし、結ばれるように俺も頑張ってサポートしたいな。
「私には一人で告白する勇気がなくて……ですね、その……光と仲がいい小鳥遊さんに手伝ってもらいたいなと……。だ、だめ……ですか?」
「別にいいよ。俺もサポートするよ」
「ほ、本当ですか!?」
机をたたき前のめりになって驚いていた。すぐに周りの視線に気が付いたのか、赤面して座っていった。
「告白する場所は決めてるの?」
「は、はいっ! 決めてます! ゆ、遊園地で告白しようかなと……。ひ、光から遊園地に誘われているのでその時に……」
「なるほど。それは何日?」
「は、八月一日……です」
あと一週間か……。
「そ、それまでに私に告白する勇気をください! こ、告白する私の背中を押してください! か、彼女さんがいる小鳥遊さんにそれをやってもらいたくて……。その、あと一週間で私に覚悟をください……。勇気の出し方を教えてください」
……勇気の出し方、か。
たしかに勇気出すのも勇気がいるからなあ。告白なんて自分の生活を変えるためにするようなものだし、それ相応の覚悟が必要となる。告白しようとは決めたけれど、まだ勇気がない。だから、勇気を出させてくれと。
結構な難題……だなぁ。なんて思いつつ、コーヒーを飲みほした。
「勇気の出し方……。わかったよ。じゃ、まずはリラックスの方法からやっていこうか。告白するにはまず冷静さが必要となるからね。何を言うか考えられる平静さをもつように自分を鍛えないとね」
「はい! 手取り足取りお願いします師匠!」
「し、師匠?」
「恋愛の師匠です! よろしくお願いしますね!」
わかったけど師匠はやめてください。弟子取る気はないので。




