空の受難②
空は、洗いざらい話した。
「ダイエットしてて食事制限を……か」
「うぅ。やっぱダイエットは無理なのかな……」
ファミレスでハンバーグを食べている空。
俺らもちょっと早いけれど夕食を食べていた。
「無理にしたらそうなるのは必然でござる」
「いきなりやろうとするのがダメなんだよ。ダイエットは無理なくが前提条件だからな」
「無理したらそれはダイエットじゃないっす! それはもう一種の拷問に近いっすね」
隆たちがダイエットをばっさりと切り捨てた。ひどいかもしれないが事実である。ダイエットをいきなり食事制限から始めたらそれはストレスで逆に食べてしまう。ちょっとずつ食べる量を減らして、足りなかったら野菜で補えばいい。
「うぅ……。他にいいダイエット方法はないかな……」
「ダイエットならあれだ。食前にガムをかむといいらしいよ」
「……なんでっすか久太」
「ガムを噛んだら満腹中枢が刺激されて少しの量でも満福のような幸せ巻を得られるのだと」
「なるほど。食べる量が自然と減ってくのでござるな」
「そゆこと」
よく「体重増えちゃったよー!」と喚き散らす瑞穂がそれを実践してる。おかげでガムの包み紙がごみ箱を占めています。
「それに、俺の眼だと西園寺は痩せてるように見えるけど」
「太ってるよ。子の前なんか胸のボタンが吹っ飛んでいったし……」
……胸?
なんで胸のボタンが吹っ飛ぶのだろう。太ったら普通おなかのボタンじゃないだろうか。なんて疑問におもうのは俺だけではなかったようで。
「太ったからって胸のボタンが外れるなんてことは普通ないと思う所存でござるが……」
「そ、そうなの? で、でも結構勢いよく飛んでいったし……」
……ああ、気づいてないな。俺は理由わかったけど。でも言いたくないなあ。これって男の俺からしたら結構恥ずかしいじゃん。
なんで胸がでかくなったからだって言わなきゃいけないんだよ。デリカシーくらいはあるわ。
「……お、俺は太ってる空も好きだよ?」
「うん。そう言ってくれるのは有難いんだけど……。太ってるって動きにくそうだし……」
「動けるデブっていう言葉もある! 安心しろ!」
「そ、そうでござる。それも魅力の一つでござるよ」
「だ、ダイエットなんて無理すんな。ありのままでいけありのままで」
「ありのー、ままのー」
「小寄いたんすか!?」
空のフォローに向かう。というか、ダイエットする必要はない! 単純に女性の象徴が成長しただけだから! そう言いたいけれど性別の壁が……。これが同性なら胸を触って確認とかそういうこと出来たのに! 性別の壁はどんだけ高いのだ……。高いし厚い。それが性別の壁。ベルリンの壁とは違い崩壊はしないし壊れもしない。
「……そう?」
「そうそう。素の自分をみせたほうが俺嬉しいからさ」
「……そう。じゃ、ダイエットは控えようかな……」
空はもう一皿ハンバーグを注文していた。
「私の体重百キロ……」
鏡の前にはぶくぶく太った私の姿。
「はっ、ゆ、夢か……」
空は自分のおなかをさすった。




