生徒会の本末②
俺は生徒会室に連れてこられた。
千早という女子はそこで引っ張るのをやめ、席に座る。
「座らないか」
「あ、おう」
俺は座る。
生徒会の席ってこんな座り心地がいいのか……。俺の教室の席もこういう風にしてほしいものだ。なんてどうでもいいことばかり考えていると。
「……そろそろ話していい?」
「あっ、すいません」
忘れていたよ存在を……。
俺は千早さんのほうを向き、話を聞く体勢をとる。それを見計らって千早さんは話し始めた。
「結論を先に言うと、生徒会長は自主退学をした」
「……自主?」
「生徒会長という肩書にこだわっていたんだろうな。不信任を出されたことによって彼は肩書を失った。そして、学校に来るのが嫌になったらしい」
「つまり不登校、と」
「まあ、退学届けはだしてあるらしいから退学だな」
これも己の地位を欲し、自分勝手の身勝手男の末路なのだろう。悪が最終的に向かう結末はきまってバッドエンドでしかない。
正義は我にあり。これは本当にいい言葉だ。
「そして書記はいじめを受けるようになって不登校。副会長は次の会長選にでるらしい」
「そうなんですか。……貴女は?」
「私か。私は……いじめもないが生徒会だったということで白い目で見られるだろうし慎ましく残りの学校生活を送っていくとするよ」
「……そうか」
千早さんはいいひとだ。生徒会の本末をきちんと教えてくれる。千早さんのいうことは嘘偽りはないように聞こえた。
「だが、私も生徒会の一員だった。せめてもの筋は通さないといけない」
千早さんは頭を下げた。
「すまなかった。私たち生徒会が君に粗相をしてしまって」
謝ってきた。
俺は謝罪なんて求めていないし、千早さんは俺のために奔走してくれたと先ほど聞いた。俺にはもはや千早さんから謝られる筋合いはない。
この人は道理を通そうとしているだけ。上司の失敗は部下の失敗という連帯責任を果たそうとしているだけ。この人が一番の被害者だったのかもしれない。そう思えてきた。
「顔を上げて。俺は別に気にしてないよ。千早さんが謝ることなんてないし、俺はあの会長に謝ってもらいたいくらいだ」
「いや。会長の責任は部下である私の過ちでもある。謝らせてくれ。でないと私の気が済まないから」
「……優しいんだな」
この人は自分に厳しい人だ。だったら尚更信頼できる気がした。
この人となら、うまくやれそうな気がする。恋……とはちょっと違うが、俺は仲良くなりたいと心から思えた。
「気にすんなよ。謝罪の気持ちは伝わったから」
「……そうか」
といって頭をあげる。
「悪かったな。彼女との時間を少しもらってしまって。私はちょっと考え事してからいくから先に出て言ってくれても構わないよ」
「了解」
俺は、生徒会室を後にした。
これで私の罪悪感も拭えた。
小鳥遊は、やっぱり西園寺のことが好きらしい。私も好きだったのにあきらめざるを得ない。それはちょっと辛い。
中学校の時からずっと片思いを続けてきたのに。彼女ができたと聞いた。その時に好きという気持ちを隠して、何かに没頭するべく生徒会に入って。やっと気持ちの切り替えができたと思ったのに。
やっぱ無理だよ。諦めることなんてできない。
本当に諦めたいなら玉砕した方がいいのだろうか。




