一件落着
同時期の理事長室。理事長は一人の男と対談していた。
「単刀直入に言う。小鳥遊 久太の退学を取り消せ」
面会に来ているのは君清だ。
空から話を聞いて、久太が退学させられたことも耳にした。空がそのせいで悲しむものだから動く羽目になった。娘煩悩がすごい父親である。
「そうといっても退学させてしまったものはもう……」
「なら私のところからの支援金はもう来月からなしということでいいな。理事長」
「そ、それだけはや、やめてください」
「ならば取り消すのだ」
「それも無理です」
頑なに譲らない理事長。その理事長にだんだんとイラつきが募っていく。
「ならばどうしたら退学を取り消してくれるんだ?」
「どうもこうも……まあ、支援金が二倍ということなら妥協しなくもありませんが」
「……話にならん。では来月から支援はなしだ」
「そ、そんな! あなた様から支援をしていただかないと私の学校の面目が……」
立ち去ろうとした君清にしがみつく理事長。そのことが君清を本気で怒らせるトリガーとなってしまった。
「私の学校? あなたは学校の事なんて思っていませんよね」
「な、なにを?」
「私は知ってるのですよ。あなたが支援金を着服してること。証拠もそろっているので裁判所に訴える準備は万端ですので」
理事長は支援金に手を付けていた。
金を使いすぎてなくなった理事長は支援金に手を出している。学校を纏めるつもりは毛頭なく、支援金さえあればいいと感じているのだった。
そのことがばれ慌てふためいている。表情では冷静を装うも隠しきれてはいないようだった。
「お、おやめください。私の首がとんでしまいます」
「そうか。じゃあ、しよう」
「申し訳ございません。小鳥遊さんの退学を取り消します。許してください」
「わかりました。では、その約束で」
「は、はいっ!」
こうして、退学を取り消してもらったのだった。
だが、その約束を守るつもりは君清には毛頭なかった。支援していてもまた理事長に毟り取られるだけなのだから。理事長にわざわざ支援する理由はない。
だから、支援金に着服したことではなく、自分の資産を奪われた。そういうことで理事長を訴えるのだった。
生徒会の不信任、理事長の訴訟。
この二つのことが起き、教職員は多忙を極めていた。
「……やってやった」
「久太くんの退学も取り消されたそうだしこれで終わりかな……」
教室で打ち上げみたいなものをしていた千早と空。
二人は笑っていた。
「滑稽だったよ。会長の顔は」
「こっちも理事長が私の家にきて『話が違うじゃないか』といってたよ」
空はもちろん生徒会で何話したか知らないし父も何話したのかは知らないがとりあえず事件が解決したことはわかった。それでほっとしたのもある。
「これで、一件落着、だな」
「……少しでも久太くんの役に立てたのかな」
「……立ててるだろ」
空の悲しげなつぶやきは、千早に答えを返されたのだった。




