生徒会の崩壊と千早の怒り
「手筈は整った。あとは仕掛けるのみ」
千早は空にそう告げる。
もう、生徒会を潰す手段はできた。実行に移すのみである。
「うん。じゃあ、これ、もっていってね」
「任された」
千早は署名が書かれた紙をもっていった。
生徒会室。
そこにはもうみんな揃っており、千早だけがそこにいなかった。
「会計。遅いぞ」
「……すいません。ちょっと予想外の書類が提出されてしまいまして」
「予想外の書類?」
千早は深呼吸を一つして、紙を目の前に掲げる。会長はそれを覗き込むと驚いたような顔をしていた。どうしてなのだろうかわからないような目で。
「そ、それは……!」
「生徒会不信任案?」
「な、なぜだ! なぜ不信任が出るのだ!」
会長は大きく取り乱していた。
不信任が出たことで戸惑いを隠せていない。自分の傲慢さも、何もかも気づいていない。もはや愚か者とも呼べるほどの滑稽さを伴っていた。
「誰が、提出したんだ?」
平然を装っている書記が質問する。
「西園寺さんですよ。貴方が好きだった」
「なっ……! 何かの間違いだ! 西園寺さんは優しいからそんなこと絶対にしない! そ、そうだ! 小鳥遊に唆されたに違いない。あいつならやりそうだ」
勝手な解釈をして勝手に決めつける。だけれど、もはや抵抗は出来なかった。
不信任が出た時点でもう生徒会は解散しなければならない。もちろん不信任を生徒会が握りつぶせば別なのだが、千早という生徒会を裏切ったものがいる時点でもはや生徒会に打つ手はなかった。
「こんなの通すわけがない! 理事長にはこれを報告しない。いいな」
「いえいえ。そんなわけにもいかないんですわ。もう、私提出しましたし」
「なんだと!? お前は生徒会を裏切るのか!」
会長が千早につかみかかる。胸倉をつかまれた千早は睨むでもなく笑っていた。会長を、目の前のクズを微笑ましく嘲笑っていた。
「裏切るなんてとんでもない。裏切るってのはもともと絆があったからできるのであって私たちにその絆はありました?」
「あ、あったとも! 私たちはみな……」
「ねえよ。そんなもん。夢みんな。ガキ」
千早は会長に唾を吐いた。
会長の手を振りほどくと会長は地面に座り込んだ。へたへたと体の力が抜けたようで。しばらくは立てなさそうだった。
地べたに座り込んだ会長を千早は見下す。
「あるだろう。俺は少なくとも千早を信頼していたが?」
書記がそうフォローに回るも。
「……ありません。私は会長を信頼したことなんてないです」
「俺もねえよ。権力をひけらかすのはお前らだけだ」
庶務と副会長は千早の後ろに回った。
会計、庶務、副会長と会長、書記。もはや力の差は歴然と目に見えていた。
「う、うそだ……。俺が不信任? 俺は学校のために尽くしてきたはずなのに、なんで生徒から裏切りを……」
「まだわからないんですか。これが出た時点で学校に尽くしたとは言えないんですよ」
「俺たちはきちんと尽くしてきたはずだ。学校がよくなるために」
「よくなるどころかさらに悪化させてるのはお前らだってことわからねえのか」
「だ、だが」
まだ言い訳をする会長に千早がキレた。
「ごちゃごちゃうるせえ! いいか! お前が小鳥遊を退学させたからこうなったんだ! 身から出た錆だぜよかったな! 退学が好きならお前が退学しろカス!」
そう言いのこして千早は去っていった。
「……千早ちゃんって怒ると性格代わるんだね……」




