不幸が訪れる
ぺちゃっと音がする。上を見るとカラスがフンをしていた。
上空にはたくさんのカラス。俺の頭にも、カラスのフンが落ちた。
「うわっ」
……ばっちい。
俺は急いで家に帰り、風呂に入る。
だが、また、問題が起きた。シャワーの蛇口を捻っても水が出てこない。お風呂を張ろうとしても水が、でてこない。
こ、こわれた……?
「ああ、ついてなさすぎだろ!?」
服を着て洗面台で洗うことにした。
髪の毛を冷たい水で洗う。念入りに力強くゴシゴシと擦り、カラスのフンを落とした。
今日はとことんついてなさすぎる……。
「……っと、トイレ」
俺はトイレに駆け込み、用を済ます。
だが、不幸に不幸は重なるもので……。
用を足し終えたので拭こうとすると、トイレットペーパーがない。
よ、予備のやつ!
予備もないだと!?
「……紙がねえええええ!」
今日なんでこんな不幸なの!?カラスにフンはかけられるわ、風呂が壊れるわ、紙がないわ!俺に恨みでもあるのかよ!
というか、空と会わなくなってから不幸が続いてるんですが?もしかして空と一緒にいないと不幸になるの?
「……退学を取り消したい」
空と一緒にいるためには退学を取り消したい。というか、このまま不幸が続くと俺死にそうです。
俺はティッシュを取りに行こうと下半身丸出しのまま廊下を歩くと。
「ただいまー、兄さ……ん……」
「…………」
妹、タイミング悪い。
「ぎゃああああああ!?へ、変態!」
と、瑞穂は俺の股間を蹴り上げた。
ま、まったくもってついてない!
股間がまだ痛い。瑞穂のやつ思い切りからやがった……。
「ごめんって。悪かったよ〜」
ポテチを食べながら謝る瑞穂。俺はテレビを見ていた。
ジンジンと痛みが残っている。股間も、退学したということも痛い。痛みが残っている。
退学した。将来的にも、今も痛い。
胸にチクンとした痛みがある。何かの病気?この頃動機がどーきどき……。
「ポテチ食う?」
「食う」
「はい、あーん」
「自分で食えるっつの」
あーんしてくる瑞穂の手からポテチを掻っさらい口に運ぶ。
「そういや、今日空さんに声かけられたよ」
「空に?」
「うん。なんか、署名活動してた」
「署名?」
なんの署名だろう。あれか?北方領土返還のやつ。違うか。学校でそんなことするわけねえもんなー。だとするとなんの署名だろう。
「まあ、署名しておいたよ。なんか慌ただしく動き回ってた」
「そうか……。空のことだから何か考えがあるんだろうな」
空は考えなしでは動かない。何か助ける手段があると思って動いてるのかもな。
嬉しい反面、俺が何も出来ないことが悔しいな……。
「兄さんってほんと彼女バカだよねー。その分も妹に分けてくれたらいいのに」
「俺が、彼女バカ?」
「自覚ないの?」
俺が彼女バカ……だと。
「空さんは愛されてるなあ」
「……まあ、それは認めるが」
俺も愛してる自信はある。
「これで別れたら相当落ち込むだろうなあ」
「なに?別れさせるつもりなの?」
「別にそんなつもりはないけどー?ふふ」
その不気味な笑いが怖い。
なにを企んでるんだ。
「まあ、別れたら瑞穂が慰めてあげるから」
「や、やめろよ。不吉だろーが」
なんか別れる予兆みたいじゃん、それ。




