署名活動
空はまず隆たちに声をかける。
「隆くんたちこれに署名してくれない? 久太くんを助けるために」
「これってなんでござるか? まあ、久太氏を助けるために必要なら拙者は惜しまずサインをするでござるが」
「俺もする」
「俺もするっすねー。たぶんそれって退学を取り消しすることを訴えるやつっすよね? ならサインするっすよ」
「うーんちょっと違うけど助かる」
「……私も」
隆たちは自分の名前を書いていった。これで署名したのは五名。自分を含めてだが。
隆たちは書き終えるとその紙を空に手渡す。
「うん。ありがと」
「なに書いてるんデス?」
「ああ、ヴァレンタイン。いいところに。これにサインしてくれない?」
「オー! ワタシ有名人!」
そっちのサインじゃないんだけどなって苦笑いしつつ、ヴァレンタインがサインを書く様子を見守る。ヴァレンタインのサインはフランス語で書かれており読めないがたぶん自分の名前を書いているのだろうと解釈して教室から出て行った。
教室の外に出るとものすごい数の男がそこにいた。胸にはなんだかマークを付けて。
「西園寺 空様! 我々ふぁんくらぶも署名いたしますぞ!」
「空。まず私を頼ってよ。こういう姑息なことするなら私のほうが適任じゃん」
ふぁんくらぶと、そのふぁんくらぶに属している空の友人輝美が声をかけてきたのだった。空は、ぱあっと笑顔を振りまくとふぁんくらぶの数人がその場に倒れこんだ。
彼らはずっと「女神降臨。女神降臨」と呟き続けていた。
「我々も生徒会に戦争を仕掛けることに決めたでござる。徹底抗戦の心意気を見せます。空様も久太様を助けるべく頑張ってくださいませ! 我々も応援いたします!」
「うん。ありがとう」
署名のところにはいっきに三分の一が増えて、半分まであと少しとなる。
だけれど、甘くなかった。
廊下ですれ違う人に声をかけても断られるばかりで、あれから一向に増えていない。ふぁんくらぶのときの人数から一向増えてはいなくて、授業が始まるチャイムがもうそろそろ鳴るからと帰ろうとした矢先、声をかけられた。
「おう。西園寺。聞いたぜ。生徒会を潰すんだってな」
「あ、高垣さん」
「俺もかくぜ。生徒会は俺も嫌いだ」
といって署名を書いてくれた。やっと一人増えたのだった。
「あと数人で半分だ……」
廊下ですれ違う人に申し込んでやっとこさ半分まであと五人くらいとなった。
あとは、知り合いに聞きに行くだけであり、一人は心当たりがある。久太の妹だ。
「瑞穂ちゃんいる?」
空は一年生教室まで訪れると瑞穂を呼ぶ。
「はい。空さん。なんですか?」
「これに署名をしてくれない?」
「なんですか、これ」
「これは……生徒会の対抗策、かな?」
「そうなんですか。わかりました」
まずは瑞穂の署名をゲットした。
「なーにしてんだよ西園寺!
「あの、お疲れですね?」
「ふああ……」
廊下を歩いていると珍しいトリオに出会う。百瀬に宮古に竜太郎だった。
「あ、えっと、署名活動してるんだ」
「署名?」
「うん。竜太郎くんたちも署名してくれると助かるかな」
空は紙を差し出す。
竜太郎は何も読まずに自分の名前を書いた。
「ほら、春もかいたらどうだ?」
「う、うん。私もかくよ」
「あたしもかくぜ!」
そして、一気に三人分なくなったが、あと一人。過半数まで一人が足りていない。
「なーにしてるのにゃ?」
そして通りがかった猫又。何事かと空の顔を覗くと、空にいきなり抱きつかれる。
「にゃにゃ!?」
「猫又さん! いいところに! これに署名を!」
「しょ、署名?」
訳が分からず、タマは言われるがまま自分の名前を書いた。




