反旗を翻すとき
久太が退学宣告を受けた翌日。
体育館である集会が行われていた。学校側が行うものではなく、生徒が自主的に行う集会。その名も西園寺 空ふぁんくらぶ。その集会が開かれていた。
「我々の幸せはなんだ!」
「それは空様の幸せ!」
「我々の喜びは!」
「空様の喜び!」
「空様が悲しめば」
「我々が解決してみせよう!!」
空の熱烈なファンたちが声を張り上げていた。
空のファンクラブは絶大な勢力を保有している。全校生徒の三分の一を占めるファンクラブだ。熱狂的なファンが多く、空が悲しめば会員全員が悲しむほどである。
「今、空様は大変傷ついておられる。それはなぜか!」
「「「「久太様が退学になったから!!」」」」
「そうだ! 空様はきっと悲しんでいるに違いない。ならば我々の手で、久太様の退学を取り消しにする。それが我々がするべきことだ! 空様の恋人を守る。それも、我々の使命である! わかっているな!!」
「「「「おす!!」」」」
でかい声が体育館に響く。
「さあ、生徒会に謀反を起こそう! わが校の平和と秩序のために。邪知暴虐を尽くす暴君を懲らしめるのだ! 謀反を起こすときは今! 戦いは始まるばかりである!」
「「「「「「おおーーーーーーー!!」」」」」」
歓声が鳴り響いた。
退学。
それは冷静になると結構まずいと思えるような気がしてならない。
つまり卒業できない。卒業した証をもらうことがなく、高校中退と履歴書に書かなければならない。流石にそれはやめておきたいのだ。
今からでも違う高校でも探すのが賢明だろうか。
っというか、あれから空はどうしたのだろう。俺は怒りに任せて帰ってきた。途中で空と別れて、俺は怒って家に帰って……。
空は悲しんでいるのだろうか。きっと傷ついている。そう思ってしまう。
いや、この場合生徒会に怒りを溜めてるのかもな……。だけれど、それは口にしない。空は絶対に口にしたりはしないのだ。
「……まあ、悪あがきでもしておけばまだよかったかな」
潔く負けを認めたようなものだろう。今はそうだ。
退学を受けた時、俺は少しでも反論をすればよかったのだろうな。失敗した。これじゃあの生徒会の命令に従っただけじゃないか。ちょっとムカつく。ちょっとどころじゃないが。
「まあ、隆たちに学校の様子を聞いて、暇なときは勉強でもするか。違う学校に行ってまたやり直すというのもありかもしれないが、俺はまだあきらめたわけじゃないからな」
負けは認めたがあきらめてはいない。まだ、リベンジする機会はあるとそう告げている。
あの時、会長以外の様子をみると会計が会長を睨んでいたのが見えた。きっと会計は俺の退学に反対しているはずで、きっと俺の味方だ。
敵の敵は敵というしな。
どうにかして、あの会計と連絡を取りたいものだ。俺が謀反起こしてやるために。あいつらを潰すために。
「千早くん。これを掲示板に貼ってきてくれ」
「……了解した」
千早……。生徒会会計は無表情でその紙を受け取る。それは久太の退学に関することが書かれていた。それをみてイラついたがそれを抑える。
そして、生徒会室から出て行った。
何もしゃべらず、今にも紙を破り捨てたい衝動を抑え、玄関に向かうと、知った顔が見えた。
西園寺 空だ。空は意気消沈としており、魂が抜けたような感じではなかったが、ただ、ぼーっとしていた。
千早はその様子をみて歯をかみしめる。
あの場にいて、何もしなかった自分が腹立たしい。そう思ったのだった。
あの時、強がっていないであたしも退学に異議を唱えたらまだよかったのかもしれないな。そんな後悔と無念が心に積もっていく。
その心が動かしたのか、何かしたいと思ったのかわからないが「西園寺」と空を呼び止めたのだった。
働くって不安
きっとブラックだと
たいてい考えてしまう。
くるしみを味わって
ないてしまうかもしれない。
いまもなきそうなのに
なおのこと泣きそうだ。
あすの不安もあるしな。
今の筆者の気持ち。一文字目だけ縦読みで読んでください。
ただの作者の遊びです。




