退学宣告
俺らは生徒会室に連行されると、そこには生徒会の皆さんが勢ぞろいしていた。
目の前には会長が座り、その隣には何やら美少女のフィギュア。……フィギュア? まあ、それはおいておいてだ。
「俺らが不純異性交遊とやらをしたっていうのか」
たしか、この副会長はそう言っていたはずだ。俺らが不純異性交遊をしていると。もちろん勇気あったら俺はとっくにしてるわ! ないからしてねえんだよ!
「ああ。君たちは妙に仲がいいそうじゃないか。だから怪しいと思ってね」
「仲がいいだけで疑われるのならカップル全員不純異性交遊で取り締まれよ」
多分これは建前だろうな。もっともな理由をつけようとしているだけ。なぜ俺らなのかはきちんと理由がある。俺と空を引きはがしたいから。たぶんそれ。
「建前はいいから本当のこと話せよ。会長さん」
「……去年。私は西園寺先輩に告白をした」
夏の暑い日。日射が照り付ける真下の中庭。そこで、一人の男子がそわそわと来る人物を待っていた。
男はまだかまだかとその辺をぶらつく。
そして、呼び出した人物がきた。
『好きです! 俺と付き合ってください!』
男はそう言った。
だけれど、その女生徒は間髪入れずに返答をした。
『ごめんなさい。私、好きな人がいるんだ』
「その時だよ。その好きな人が憎いと思ったのは。それが小鳥遊。お前なんだよ!!」
生徒会長は我を忘れて叫んだ。要するに、振られたから悔しいのだろう。単なる逆恨みなのだが。それに、自分が付き合えるとうぬぼれていた。そういうのもあるのだろう。
顔は結構かっこいいのに中身が残念な感じの奴だな……。
「俺はお前が嫌いになった。どうにかしてお前らの仲を引き裂きたくてな。そして、ある日権力が手に入った。俺が考えたのはまずお前らを引き裂くことだ!」
生徒会長は野望を唱える。
自分勝手すぎる。ただ、振られただけなのに。醜い嫉妬をかましているだけじゃないか。俺は、少しぷちんときたのだった。
イライラが募る。目の前で何か騒ぎまくっているのも癇癪に触る。こういうのって、本当に嫌いだわ。自分の嫉妬で動く奴。
潰したい。そう考えていたのだった。
「……やってみろよ」
「なんかいったか」
「やってみろよ! 俺は退学しても空が好きな自信はあるぞ。絶対別れないからな!!」
そう高らかに宣言してやった。
俺は、空が好きだ。退学しても、停学でもその気持ちは変わらない。俺は結構依存するタイプだから、空に依存したらなかなか離れることはしたくない。
権力? そんなものには屈してたまるものか。
「そうか! では退学だ! お前は退学!」
そう通告されたのだった。
俺は、そのまま空を引っ張って生徒会室を後にする。退学。退学に関しては生徒会でも決めることはできないのだが、あいつらのことだから何かしら証拠を捏造するに決まってる。
俺は、怒ったので教室に戻り、荷物を整理した後に学校から去っていった。
「大ニュース、大ニュース! 西園寺 空様の彼氏の小鳥遊 久太様が生徒会に退学を宣告されたそうだぞ!!」
久太の退学は瞬く間に生徒間に広がる。
それまで、生徒会に不満を持っていたものは、その不満がさらに大きくなり、小鳥遊を嫌っていた人はとても喜んで生徒会を支持するほうにしたのだった。だけれど、生徒会を支持するものは圧倒的に少ない。
なぜなら、女子はみんな小鳥遊のほうを支持していたから。
「……すっきりした」
生徒会しかいない生徒会室。そこで、椅子に深くもたれかかる会長がいた。
ぬるくなったコーヒーを啜り、覇気を失っていく。
「か、会長。よろしかったのですか? そ、その、小鳥遊くんを退学にして」
「……構わない。問題ない」
「むしろ大ありだけどな。あたしも小鳥遊は好きだったし西園寺を恨んだりもしたけどやりすぎじゃねえの。女子生徒は大体生徒会を見切っただろうなー」
やすりで爪を研ぎながら会計は言った。
「あれは単にリア充爆発させただけだからねー。少なからず嬉しいと思ってるやつもいるかもよ。俺もそのうちの一人」
書記は笑顔でそう語った。
「こりゃ近いうちに謀反が起きるな。ま、そりゃそうだろうな」
庶務はやる気なさげに行った。
今回の会長の横暴は、生徒会からも書記以外から反感を買っていた。というか、権利をひけらかしているのは会長と書記だけであり、他は至極まっとうに行使している。そのおかげでまだやっていけてるのだ。
「とりあえず生徒を納得させるような書類を作れ。副会長」
「えー……。私嫌だよ」
「これは命令だ。早くやれ」
「……はーい」




