財布、紛失!②
「それってやばくねえか!? と、とりあえず交番に……」
「の前にこの商品を戻さねえと……」
俺はかごの中にある商品を戻そうとする。
だけれど、その手を百瀬さんが止めた。
「誰かに頼んで金立て替えてもらえばいいじゃねえか」
「そ、そうだな」
俺は妹に電話を掛ける。
『はい。なに?』
「あ、瑞穂? 悪いけどコンビニ来て金払ってくんない? 財布落として金がないんだ」
『……わかった。おっちょこちょいだね。昔から』
そう言われて切られてしまった。
おっちょこちょいなのは否定ができない。というか、最後の最後でやらかすのが俺である。小学校の学芸会で劇の最後の最後でセリフをミスり感動的な物語だったのがコメディ作品のように笑いで終わってしまったということがある。そのあといじめられたなー。あの時だけだよ。泣いたのは。もう、俺は重要な役をやらないと決めたのがその時だ。
「とりあえず妹に連絡したからここで待つか」
「俺は落し物ないか交番に聞きに行ってくるよ。お前らは店員に聞いてくれ」
「あいさ」
「任せろ!」
竜太郎はコンビニから出て行った。
俺はレジで会計をしている人に聞いてみることにする。
だけれど、答えはノーだった。誰も届けてはいないそうだ。
手ごたえなし、か。
その時瑞穂がコンビニに訪れた。
「財布は見つかったの?」
「いや。今は友達が交番に聞きに行ってるとこ」
「ふうん。買うものはそれ? じゃ、レジにおいて。買い物したやつは瑞穂が持ってくから兄さんは家の中をまず探してみたら?」
「探してくれてないのか?」
「兄さんから連絡来たあとすぐに出てきたから探してないよ」
「そ、そうか。じゃあ、俺んち探してみるわ」
俺はまず俺の家に向かう。
もしかしたら俺の部屋に置きっぱなし? いや、たしかに財布を手に取った覚えはあるのだ。この手できちんと今日手に取った。そのあと、どうしたっけ。ポケットに入れたと思ったんだが。
「んー?」
「どうした百瀬さん。何か気になるものあったのか?」
「うーん。なんか……ちょっと先行ってて。あたしちょっと見てくる」
と、百瀬さんが抜けた。
俺は一人で向かったのだった。
ない。
結果はなかったようだった。そして、竜太郎から電話がきたが、落し物にも財布の類はないとのことだった。
どうしよう。部屋の隅々まで探してもないということはやっぱ家では落としてないということか?
財布持った後はトイレとか行かずにそのまま向かったからな。どこか立ち寄ることもなかったし……。
「……どうしよ」
あの中には結構な金が入ってる……。とはいっても六千近くだが。
なくした。それは六千円が一気になくなったということだ。
俺は、少し絶望しかけてた。その時だった。
電話の音が鳴り響く。それは、百瀬さんからだった。
「はい」
『なんか財布らしきもの発見したぞ』
「まじで? 色とかは?」
『灰色の財布。長財布じゃないな』
灰色で長財布じゃない……。俺の財布もそれと同じ特徴……。
それ、俺のじゃね?
結局、その財布は俺のであったのだった。
この話は本当に日常回ですね。




