財布、紛失!①
浦原と名護は翌日帰ったそうだ。
俺も家に帰り、瑞穂と一緒にゲームをしていた。
「ところで兄さん」
「なんだ?」
「最近私に構ってくれないよね。彼女ができたらそんなもん?」
「え?」
「え? じゃないでしょ。最近帰ってきたら部屋に閉じこもるし、勉強がわからなくて教えてもらおうとしても教えてくれないじゃん。最近瑞穂のこと蔑ろにしてない?」
「し、してるつもりはない!」
だけど最近妹と話した記憶がないような……。
心当たりがあるのもこれまた事実である。蔑ろにしてるつもりは毛頭ないんだが、これは傍から見ると蔑ろにしているように見えるだろう。
こ、ここで少しくらいは遊んでやらねば!
「あ、心当たりがあるからって接待プレイはしないでね」
心読めるのかこいつ!? 勝たせて気分良くさせてあげようと思ったのに!
「……で、兄さん」
「な、なんだ?」
「明日、家に友達来るから」
「お、おう。それが?」
「友達のためのジュース買ってきて」
「なんで俺が?」
「蔑ろ」
「さあ、行ってきますよ俺が!」
くそう! やっぱ後ろめたいことがあるとこうなるよね!
というわけで妹のためのジュースを買いにコンビニまで来ていた。
みんなで飲むとなると結構大きい奴だよな。2リットルくらいのやつが一本か二本。炭酸飲めない子がいたら困るからオレンジジュースの類のやつが無難でいいだろうが。
ここのコンビニその2リットルのオレンジジュース売り切れてるんだよな……。カルピスの2リットルも置いてないし、ここはどうするべきか。
カツゲン? コーヒー牛乳?
カツゲンでいっか。そう自己完結してかごに入れる。そして、お菓子コーナーまで行って今度はお菓子を物色するのだった。
これは明日の瑞穂の友達のためでもあるが俺の分もある。
もうそろテストだし、夜にテスト勉強するので夜食用に何か欲しいなと考えていた。
「頼む。絹瀬。ノートコピーをめぐんでくれ! それやんないとあたしマジで赤点取るんだよ!」
「授業中寝るほうが悪いだろうが……お? おい。百瀬。あそこにノートコピーしてくれそうなやついるぞ」
「まじで!? って、小鳥遊か! 奇遇だな! なにしてんだ?」
「妹のためのお菓子と飲み物買いに来たんだよ。あと、夜の夜食。お前らこそ何しに来てんだ?」
「あたしはこいつに小一時間ほどノートコピーをせがんでたところだ」
「俺は付きまとわれてな」
百瀬さんノートコピーのために小一時間付きまとってるんですか……。
「だから折れてな。ノートコピーのためにコンビニきたんだよ。うちにコピー機ねえからさ」
「お? ありがとう! 持つべきものは友だな! お礼にあたしの胸触らせてやってもいいぜ!」
百瀬さん? なに触らせようとしてるんですか? 貞操観念とかないんですか?
「誰が触るかよ……。ほら、ノート貸すから金は百瀬が持てよ……。俺今月ちょっと買いすぎて金がねえんだから」
「え? あたし金持ってきてねえけど」
「すまん。俺もだ」
「「…………」」
二人は顔を見合わせていた。
最初からたかる気だったんですか百瀬さん。と、二人は急にこちらを向いた。
「金貸してくれ! 小鳥遊!」
「ああ。すまないが頼んでいいか」
……俺が払うのかよ!? まあ、いいけどさ。
俺はポケットの中から財布を……。あ、あれ? 財布を……。
「あ、あれ?」
もう片方のポケットも触ってみる。だけれど財布はなかった。
後ろポケットも触れてみるが膨らみはなく、俺のポケットには財布が入っていない。このことから導き出せる結論はただ一つだった。
「や、やべえ。財布どこかに落とした……」
「「は!?」」
財布、紛失!
財布を落とす……。あれ? 前もかいたような……。書いてますね。たしか京都の時に。




