職場見学に行こう!③
「すいません。ご迷惑をおかけしました」
数十分後、やっと復帰した空はお詫びを入れて歩き始める。
今度はゲームのところを案内するらしいが、ここはネタバレを防止するためにスペースには入れず、スペースの前で説明をして、次に向かうという。
それはそうだろうな。ゲームハードはともかくゲームなんてネタバレされたらつまらないだろう。
そうして、次々と案内が終わり、職場見学も終わりの時間になった。
「本日はありがとうございました。こちらで交通費を支給するので各自会社に出るときに書類にサインしていってからお帰りください」
そういうと、俺らは帰り始める。
「いこうぜ。小鳥遊」
「俺らは今日は札幌に泊まるから遊べるぞ」
「俺、今日は帰らないと」
「ああ、飛行機の最終便か。じゃあな。霧島」
「今度は面接で会おうな!」
……そっか。次は面接か。
……なんか罪悪感がわく。俺はいわゆるコネで、面接なんてあってないようなものだから。頑張ってるこいつらに顔向けできないというか。
「……そういや、あの子可愛かったな。西園寺 空って子。ああいう子には彼氏いるのかな」
「可愛い子には彼氏がいるって聞いたことある」
「そっか。きっとあの子にもいるんだろうな。彼氏」
すいません。彼氏は俺です。
なんとなく後ろめたさがある。
「可愛い子にはきっとイケメンの彼氏がいるよ。ほら、小鳥遊みたいな……」
「……そういや、なんか、かっけえよな。イケメンだよな。小鳥遊って」
「俺らから見てもな……。もしかして小鳥遊が西園寺さんの彼氏だったり? なわけないか」
「そんなことないだろ! 悪い冗談よせよな! ……冗談だよな?」
うっ。
「な、なんか言えよ小鳥遊。否定しろよ小鳥遊!」
「俺らの不安を煽るなよ! 前振りはいいから、さ?」
額から汗が流れてくる。
どうしよう。否定したくない。俺は空が好きだから、付き合ってないということは言いたくない。隠すのはいいが、聞かれたら答えてしまう。否定したらなんだか空との関係が崩れ落ちそうな予感がして。否定できない。
「お、おい! 悪ノリはここまでにしておけよ? 心臓に悪いんだ」
「げ、芸人でもこんな長い前振りはないぞ。ほら、は、早く言えよ」
……しょうがない。素直に話します。
「……付き合ってます。申し訳ございません」
そういうと、二人は固まった。
つついてみても何も動かない。質問をしても返事がなく、屍と化していた。もう、生気も失われていたのだった。
「…………」
「…………」
「ご、ごめん」
俺らの間に何とも言え名ような雰囲気が。
そして、あろうことか、会社から空が出てきたのだった。
「あ、久太くんいた。今日は早めに切り上げてもらったからこの後デートしようよ!」
「「なっ……!?」」
「あれ? この方たちはお知り合い?」
「あ、ああ。そうだ」
「そうなんだ。私西園寺 空って言います。あなたはたしか職場見学にいましたよね。お名前は……」
「「…………」」
返事がない。ただの屍のようだ。
「こっちのノッポが浦原 省吾でこっちのちょっとぽっちゃりが名護 鉄平だ」
代わりに俺が紹介したが、二人は一向に動かない。
どうやら今頭の中で容量不足を引き起こしているようだった。ピピー、ガガーという本来なるはずのない機械音がどこかから聞こえてくるような気がする。
「浦原くんに名護くん。よろしくね」
「「は、はいっ!!」」
あ、回復した。




