職場見学に行こう!②
「本日会社の中を案内させていただく西園寺 空と申します」
空は頭を下げた。
「皆様。まずは一つの列を作ってください。会社は広いので、主な事業のところを案内したいと思います」
てきぱきと自分の仕事をこなしている。仕事ができる女性って結構いいよね。
空は基本的何でもできるから、こういうのもお茶の子さいさいなのだろう。空ができないものは俺は見たことないくらいだ。
俺らは列を作る。
「では、私についてきてくださいね」
空が歩き始めたので俺も一歩進んでいく。
まず最初に向かったのはお菓子製造課。ここではお菓子を試作したりするらしい。製造工場は別にあるから、ここで案だけは作るということだ。
「わが社はチョコレート、クッキーを手掛けています。ここではそのようなお菓子の立案、試作を思案しているところになります」
「ああ、空さん。ちょうどよかった。ちょっとこれ食べてみて」
「これですか? わかりました」
空は社員さんが持ってきたクッキーを一つつまんだ。
ちょっと赤いもの含まれている。
「この酸味は……梅? クッキーは水分が取られるので梅はミスマッチでしょう。クッキーではなくチョコレートに梅をいれてみてはどうです?」
「チョコレート! わかりました! やってみます!」
梅のクッキーか。
「……ちょっとすいません。お手洗いに行かせてもらいます。皆さまは社員の邪魔にならないように見学していてください」
と、空が離れていった。
それと同時に俺らも散らばる。俺はちょっと心配になり、トイレにまで行くと、そのような考えを持った人が数名いた。
本当にトイレにはいかなく、トイレの前で待っている。
……なんだこいつら。
やっばい……。吐きそう……。
なんとか我慢したけど無理。やっぱ梅は嫌い……。酸っぱいのはちょっとダメかな。レモンとかもダメ。ミカンもあまり好きじゃない。本当に酸っぱいのはダメなんだよね。
「……君も、あの子が心配なのかな? 大丈夫だよ。俺が見とくから」
「いやいや、僕が見ておくから君たちはどうぞ」
「俺、心配」
「……なんだこいつら」
多分空に一目ぼれしたからとか、そんな理由なのだが。
まあいいや。こいつらを無視して携帯で聞いてみよう。俺は携帯を操作して、空にラインを送る。数秒後、猫が布団に寝ているスタンプが送られてきた。
だめということか。何がダメだったのだろう。クッキーは普通そうに食べてたし……。
「……ま、ダメということなら仕方ねえか」
「ダメ? 何がダメなんだ?」
「いや。携帯で確認したらダメなんだと」
「だから何が」
「空…西園寺さんの体調が」
俺は普通に言ったつもりだった。
だけれど、他の三人は目を見開く。
「「「な、なんであんたがあの子の連絡先持ってるんだ!?」」」
と詰め寄られる。
「いや、俺あの子と同じ高校だし同じクラスだから交換したんだよ」
もちろん嘘である。だけれど、交際しているということは言えない。
前の嘘のこともあるが、交際しているというとコネ入社ということがばれる。否定できないから仕方がないが。
「いいなあ! あんたどこ高?」
「すぐそこの南高」
「そこか! 俺のとこから遠い! 俺旭川から来てんだよ」
「俺なんか秋田の田舎からだ」
「俺、中国」
うわあ。結構遠いところから。というか中国!? それなら日本じゃなく中国に就職した方が近いでしょ! なんで別の国に来るのかな?
「……あんた、名前は?」
「小鳥遊 久太」
「俺は浦原 省吾よろしくな」
「俺は名護 鉄平だぜ!」
「俺、霧島 勇気」
「中国なのに日本の名前?」
「生まれは日本。育ったのは中国」
なるほど。ややこしいやつだな。霧島。
「おう。よろしく」
俺らは握手を交わした。
浦原たちに事実を突きつけたらどうなるのかな。




