隆との出会いと恭一郎との邂逅
入学式も終わり、俺は一人マンガを読んでいた。
俺に話しかけてくるもの好きもおらず、人気なのは合格発表の時にもいた可愛い子。名前は西園寺 空とかいうらしいが、どうせ俺とは見向きもしなさそうなので俺からは話しかけることも挨拶もせず。
それから毎日が過ぎていった。
「よ、よろしくね小鳥遊くん」
「おう」
英語の時にこうやって話して、漫画読んじゃだめという注意を受けた。
だけれど、俺はやめることはなく、英語で会話するのが主題だったがそのことを忘れて漫画を読みふけっていた。
周りの目も気にせずに読んでいると、目の前になんだかのっぽな男が立つ。
「そ、それはかの有名な魔法少女ミミカルあろはの原作ではないでござるか!? 現代のリメイク版ではなく昔の漫画そのもの! おぬし、それを一体どこで!?」
これが、小波 隆との初めての出会いだった。
隆とは馬が合うのか仲良くなっていく。楽しい。今まで退屈だった世界が変わって見えるようで。灰色の生活から、少し色づき始めたのだ。
「久太氏~! おっはよーでござるー!」
「おう。おはよう」
「久太氏は昨日のあろはすぺしゃる見たでござるか? 拙者は見たでござる! なんとも手に汗握る接戦でござった!」
「ああ。あろは一回やられたもんな」
「その時はどうやって倒すんだろうと思ってしまったでござる。いやはや、もはや素晴らしすぎて感想もうまく表せないでござるな」
隆とは本当に仲良くなった気がする。
夏休みはいる前の今、俺らは遊びに出かけるプランを計画していた。
遊ぶとはいっても海とかではなく、近場のゲーセンで。クレーンゲームをするということだ。
ゲーセンに行き、クレーンゲームの前に行って百円を入れる。
ユーフォーみたいなやつを動かして、景品を取ろうとするもあえなく撃沈。わかったのは隆がクレーンゲームが下手ということだ。こういうのって本当に難しいよな。
「ああ、ほしいでござるぅ……。あろはたんのフィギュア……」
「……どけ。お前ら」
「おっと、すまないでござる」
どうやら次の客がきた。
次の客は俺らの高校の制服を着ている。顔はそこそこだけれど、さっきの口調から結構怒りっぽい性格だと思う。
俺らは怖いのでその場から離れようとすると。
「待て。ほら、これがほしいんだろ」
と、投げて寄越すのは先ほど隆がみていたフィギュアだった。
それを受け取った隆は、驚いて男のほうを向く。
「か、かたじけない」
「ああ。……あれ、お前名前なんだっけ」
「拙者? 拙者は小波 隆でござるが。おぬしは?」
「俺? 俺は新田 恭一郎だ」
そして、恭一郎と出会ったのはこの時であった。




