空と立花②
逃げた。俺らは、わき目も降らず逃げた。
逃げた先は俺の家。
俺の家の中に逃げ込む。
「おかえりー……って、空ちゃんに……もしかして立花ちゃん?」
「あ、お、お邪魔……します……」
「お、おばさん……! お久しぶりです!!!」
うちの、母さんが出迎えた。
「懐かしいわねえ。昔はよく金魚のフンみたく立花ちゃんにひっついてたものよ。立花ちゃん立花ちゃんって。あれが初恋なんじゃないかしら?」
「そうだよな! たしかに俺の後ついてきてた!」
立花と母さんは昔話に花を咲かせている。
それはずいぶん昔の話で、初恋が立花だったからといって今でも好きというわけじゃないんだけどな……。
「ほんと、育ったわねえ。久太も、立花ちゃんも。小さいころの面影もないわねえ」
ちょっと照れくさい。
「で、空ちゃん。君清から話はいろいろと聞いてるわよ。久太が好きすぎて部屋に久太のしゃし「わーーーー!?」……あらあら」
しゃし? しゃしってなんだよ。あの、カーテンのシャーってやるところ?
「ほかにも毎晩久太で「してません! してませんったら!」……まだ何も言ってないわよ?」
むううと母さんを睨みつける空。可愛い。
「そんな空ちゃんに提案するけど、今日、どう? 久太と一緒にお風呂でも……」
「はいりません!」
きっぱり否定されるのは辛いが、俺も混浴は恥ずかしい。
妹ですら恥ずかしいのに、彼女だともっと恥ずかしいに決まってんだろうが。
「なんだ? きゅーたは一人寂しいのか! なら俺と入ろうぜ!」
「断る! 風呂は一人で入るよ!」
だから混浴は恥ずかしいって言っただろうが!
心の中でそう叫んだ。
「そんなこというなよ。昔はよく一緒に洗いっこしてた仲だろ?」
「そ、それは昔の話だ!」
「ほら、入ろうぜ? な?」
「断るっていってんだろ!?」
立花は肩を組み、俺を風呂に誘う。
こいつが男なら銭湯にいって風呂に入るということはできだんだけど立花は女だ。つまり、一緒に入ることはできない。
だから家の風呂で……。恥ずかしいわ!
「久太。据え膳食わぬは男の恥よ?」
「うるせえ! 母さんは黙ってろ!!」
母さんも混浴話にのっかるな!!
結局、混浴することになってしまった。
相手は空と、立花。二人とも。というか、脱がされて、問答無用に風呂場に押し込められたという形だ。空は大事なところを隠していてまだいいのだが……。
「やっぱ風呂ひろいな!!」
立花は貞操観念というものはないのか曝け出している。
「……あまり、こっち見ないでね」
照れてそういう空。俺もそのエロさに顔を背ける。なんか、見てはいけない。これはもう、普通に背徳を犯している。
ま、前からデカいとは思ってたけど! 想像以上の破壊力! だから健全な男子には見せちゃダメなんだよ! 刺激強すぎる……。
「さて。きゅーた。背中流してやろう。座れ」
そう言われて、座らされる。
俺の背中を擦る立花。なんだか、昔もこういう風にした。懐かしい。その記憶がよみがえる。
『ほら! シャボン玉できたぜ!』
『でっかいねー』
こう、泡を手に付けてさ、親指と人差し指でわっか作ってそこに息を吹き込む。すると、シャボン玉ができるのだ。
「あ、割れた」
このシャボン玉は割れやすい。
「おー、昔やったなその遊び! 風呂入って洗ってるときに泡でよくやるやつ! 案外楽しいよなそれ!」
「ああ。懐かしくてやったんだが結構楽しいな」
俺はシャボン玉を作っていく。
まあ、ほぼ割れるんだけどさ。
「………」
空は、隣に座る。
そして、空も俺と同じことをし始めた。こうかこうかと苦戦しながらシャボン玉を作っている。
「……まあ、今日の勝負はお預けだ西園寺。また今度やろうぜ」
「……うん」
二人は改まってそういっていた。
とりあえず、立花のこともこれで解決できたのだろうたと思う。
暴走しました。反省はしているが後悔はしていない。
閑話はさんで新章にいきます。




