夏休み前最後の学校②
今回はいつもより真面目な会話してます。
北海道の夏はなにもない。
札幌冬まつりなんかはもちろん冬だしな。北海道は雪と寒いというイメージが強い。
だからこそ北海道は夏は基本的不利なのかもしれない。そんなこともないとは思うが。
「拙者は実家に帰って手伝いしてくるでござる。こっちにくるときじゃがいも持ってくるでござるよ」
「あー、俺は…まあホタテの干物買ってきたる」
「俺はなにもないっす!だから淡白な恋人買っておくっす!」
ただ北海道は農産業が盛んです。
田舎では米とかジャガイモとか作られてる。ジャガイモの生産量は日本一ィィィ!という感じで農作物が豊富。
「久太氏と西園寺氏は京都へ行くのでござろう?」
「あ、おう。八月からな」
「うむ。ならば京アニの本社の写真を頼む。拙者への土産はそれでいい」
あ、それでいいの?
「俺は…まあ、とりあえず金閣寺とか龍安寺か。有名どこで言えば。そこが見たい」
「俺八つ橋買ってきてくれるならなんでもいいっすよ!」
おーけー。わかった。
とりあえず寺と京アニね。了解致しました。というか、本社見て何が楽しいのだろうか。やっぱアニメの制作会社見るだけでなにか興奮するのだろうか?
終業式が終わる。
校長の話はとても長かった……。「えー」って言った回数は35回。暇すぎてそれしか数えていない。
「んあー、やっと終わったー。学校」
「西園寺さん夏休み入って嬉しいのか」
「そりゃそうだよ。私だって学校そんな好きじゃないし」
まあ好きなやつなんていないわな。
「これでちょっとは解放されるかなー。やっぱみんなの西園寺 空でいるのはちょっと疲れるんだよね」
「あ、やっぱり?」
「うん。だって恋するのも許されないしさ。なにより辛いのがみんな平等に接しないといけないってこと」
「それは西園寺さんが望まれた存在だからじゃないの」
俺ら非モテ集団とは違い西園寺さんはみんなから望まれている高嶺の花。
みんなから必要とされているのだ。
「その望まれた存在だからねー、いろいろと鬱憤とか疲れがたまるんだよね。あ、これから時間ある?ちょっと付き合ってほしいとこあるんだ」
「いいけど、どこいくんだ?」
「ひ、み、つ」
西園寺さんは口に手を当ててウインクをしてきた。その可愛らしい笑顔にますます惚れそうになったのは秘密だ。
そして連れてこられたのはラウンドツー。
その中にあるバッティングセンターで俺と西園寺さんはいる。
西園寺さんはバットを構える。
「うりゃっ!」
カキンと心地よい音を立ててボールは飛んでった。
「久太くんもやる?」
「じゃ、隣でやらせてもらうわ」
俺もバットを構える。
弾速が遅いやつを選び、バットを構えた。
「それにしても意外だな。こういうとこには来るんだ」
「うん。スポーツでストレスを発散してるの。最近は野球にハマり中」
バットを振りかぶる。
「やっぱみんなの西園寺さんでいるのは辛いか?」
「うん、辛い。望まれた存在だからさ、それに応えなきゃって思っちゃう」
「そうか」
まあ、羨ましい限りだわな。
「俺は西園寺さんが羨ましいよ」
「なんで?」
「非モテ集団は言わば望まれなかった存在だからさ。望まれてる西園寺さんが羨ましいっ!」
思いっきり力を入れて振りかぶる。
だが、空ぶった。
「私は久太くんたちを望んでるけどね」
「一人から望みを受けるのと複数人から望みを受けるのとは全然違えよ」
「そうだね」
「一人から認められても周りは俺らを認めない。人は周りにすぐ流されるから頑なに認めようとはしないんだよ。周りとは違うと思いたくないからな」
周りと違うと思われたくない。思われたら迫害される。だからこそ周りを衒う。自分も周りと同じと自己暗示をかける。
それがどんどん連鎖していく。最終的に自分たちと違うのは悪で、同じやつは善となる。
「まあ、多少捻くれてるかもしれないし穿った見方だと思うけど的を射ていると思う」
「ううん。その通りだよ。みんなはみんなに流されてる。自分の意思とは違うとこいってる。自分の意思を貫いてる小波くんたちは凄いと思う」
「まあ、俺もあいつらも基本的に諦めて我が道をいってるからな」
だからみんな基本的にオープンだ。
オタク趣味も隠そうとはしない。モテることを諦め、自分の趣味に真面目に向き合う。
そこらへんのグループより人間らしくないといえる。
「はは。まあ、そっちのほつがいいかもね。何にも縛られない方が楽でいいよ」
「まあ、縛られるよりはいいわな」
何にも縛られないぶん好きなように出来る。
その点では誰よりも勝っているのだ。
「俺らは負け組だと言われてるけど、それは違うよな」
「そうだね。誰よりも勝ってると思うよ」
「人生を楽しんでるほうが勝つという言葉があるからな。人生は楽しんだもん勝ち。俺らから見たら周りが負け組なんだよ。楽しくなさそうに見える」
みんな周りに合わせて辛そうだな。俺らとは違う。
「だから西園寺さんももうやめたほうがいい。みんなに望まれてるからって自分を見失わない。楽しくないだろ?そんなことしたって悲しいだけだろ?」
「……そう、だね。うん。善処してみる」
「それやらないやつのセリフだからな」
俺は、高く高くボールを打ち上げた。
人生の勝ち組は俺らだ。未来に不安があれど今が楽しければそれでよし。




