自分の世界にしか生きられぬ人間
今日は空が仕事があると言って帰ったので俺は一人で学校に残っていた。
入院中の授業を先生に頼んでいま教えてもらっているのだ。テストもあるだろうし、そこだけやってなくてわからないという言い訳はしたくないからな。
その休憩中、思わぬ人物と遭遇した。
「隆に……三橋さん?」
なにやら話しているようだ。
近くで聞き耳を立ててみる。
「ねえ、私西園寺って人の魔の手から小鳥遊くんを救いたいの。小波くん小鳥遊くんの友達でしょ? 別れるように言ってくれないかな?」
「西園寺氏はそんな悪くない人でござる。あのラブラブなカップルの邪魔は拙者にはできないでござるよ」
「……でも、本当に西園寺って人は危ないんだって。小鳥遊くんは騙されてるの。だから……」
「久太氏は騙されても大丈夫。あいつは強いでござるから」
いやいやそんな。
……で、三橋さんも空が危ない奴だと信じているのか。本当にこの質の悪い噂はやめてほしいものだが。誰だか知らないが、俺は許すことはしたくないな。
俺が好きな人を侮辱されているんだ。許したくもないだろう。
「でも……」
「それ以上言うなら久太氏に対する侮辱として受け取るでござる。立ち去るのが吉」
「……うん」
悲しげな表情をしてこちらに向かってくる。
やばい! 聞き耳を立てていることがばれたらなんだか嫌な気分だ。それに、ちょっと要注意人物だからな、こいつ。空が言うには裏があると。
俺は近くにロッカーがあったのでその中に入った。
俺はちらっと外を覗く。
すると、三橋さんが壁を殴っていたのだった。
「ムカつく。なんで小波は私に従わないの! あいつも敵ね! 小鳥遊くんを攻略する敵!」
……やっぱり裏がありました。
声を聞かれたらまずい。俺はすぐにじっと動かないで様子を見ることにした。
「西園寺も西園寺で余裕ぶっこいて! むかつく! 私がヒロインなのにヒロイン面かいて……。小鳥遊くんのそばにいるのは私が一番ふさわしいのに!」
と、彼女は壁を殴り続けている。
俺は何もできず、ただ、茫然と突っ立っているばかりだった。
最初は優しいと、小動物を感じさせるかのような可愛い雰囲気に少し見惚れていた。だけれど、今の彼女はそんな面影すらも残していない。
自分がヒロインだとかいって痛い女。それが今の彼女に対する印象だった。
「くそ……。お父さんに頼んで西園寺と小波を追い詰める。ふふ……」
そういって彼女は去っていった。
俺はロッカーから出て、先ほどの状況を振り返る。
お父さんに頼んでって……。あいつの親は偉い奴なのだろうか。
だけれど、空のお父さんにはかなう気配がなさそうだ。それは置いとくとして。問題はあいつだ。あいつが、空の悪いうわさを流している張本人だとわかった。
そう分かった瞬間に、戸惑いもしたが、何より感じたのは怒り。
こういう女、俺は嫌いだと思った。自分中心の世界にしか生きてない住人。俺は、仲良くなれる気がしない。あんたこそ、イケメンと付き合いたいだけじゃねえかと、思ってしまうのも無理はない。
噂は全部、自分の事じゃないか。
多分、自覚はしてないんだろうな。腹黒なところも、ただのイケメンに媚びるビッチということも。すべて自覚はしていない。
ほんと、面倒なタイプだ。本宮と同じような感じ。それに似た感覚を今も味わっている。
本宮が消えたと思ったら今度は三橋。
許さない。
俺は、腹立っている自分を抑えながら教室に戻っていった。
若干タイトルが皮肉っぽくなってしまってるような感じがします。
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あと、今次の章の構想を頭の中で練っているのですが思いつかない…というか、どちらをやるか悩んでいます。
『出会い編』と『未来編』
どちらがいいか、感想等でもらえると嬉しいです。
『未来編』は多分真面目
『出会い編』は多分真面目じゃない
こういう構想なんで、好きな方を。どちらにせよやるのでどちらが先に読みたいか…。で、お願いします…。
いや、ほんとどっちにしようかな……。




