ほんと、頼もしい人だ
「久しぶりだな!」
といって、貧相な胸に埋めてくる立花。
「……っと、そっちは彼女か?」
「あ、お、おう。そうだ」
そういうと、立花の鋭い視線が空に向く。空は一瞬ひるんだが、睨み返していた。
やべえ。見ないうちに超怖くなってるんだけど、もはや虎の眼なんだけど。やばいよ。肉食過ぎて怖いよこの子。
「……ふぅん。結構芯はあるようだな」
と見定めたかのようにいう。
空は強い。心が強い。あまりへこたれないのだ。去年は、みんなの西園寺でいることが疲れたとか、弱音を吐いていたけれど、今では、吐かず、前を向いている。
進歩はしたのだろう。そういう俺は、まだ、一歩も進めてないような気がするけどね。
「だが、悪いことは言わねえ。きゅーたと別れろ」
「嫌だよ」
「……俺が殴るって言ってもか」
「もちろん。私は別れないからね」
俺の彼女と立花が睨みあっていた。
こういうとき、漫画の姫様なら「やめて! 私のために争わないで!」とかいうのだろうが、俺は秘めじゃない。でもいいたい。けど、口を出したらなんだか殺されそうです。
というか、この光景はうさぎが自分のオスを盗られたくないと必死に虎に立ち向かってるようにしか見えない。
「面白い。その言葉忘れんなよ!」
といって、拳を振りかざそうと空の胸倉をつかみ、拳を天高く掲げた。
俺は、咄嗟に駆け出す。そして、拳が振り下ろされたのは俺の頬にだった。
「いってえ!!」
「じゃ、邪魔すんなきゅーた!」
「邪魔すんなって人のこと言えるかっ! 人の彼女殴んな!」
「知るか! 弱肉強食なんだよ!」
といって、再度殴ろうとすると、なぜか、立花が吹っ飛んだ。
誰かに蹴り飛ばされたようだった。その蹴り飛ばした犯人はというと。
「ふぅ。大丈夫か小鳥遊。西園寺」
百瀬さんだった。さすが武闘派……。
「も、百瀬ちゃん!」
「あたしがきたからには大丈夫だ。安心しろ!」
「た、頼りになるよ」
真面目に頼りになる。
相手は虎。こちらは百獣の王、ライオンだ。凶暴さはそちらが上だが、実力はこちらのほうが上である。
「ってえな。俺を突き飛ばしたのはお前かよ」
「ああ。あたしのダチを殴ろうとしてるのが見えてよ。助けたまでだ。逆恨みすんなよ」
「……ちっ」
立花は本能で勝てないと察したのか、手を挙げる。降参、そういう合図だった。
「俺はお前を認めねえからな」
そう言い残して、立花は去っていった。
「じゃ、あの金髪の人が久太くんが昔遊んでた子?」
「ああ。高垣 立花という名前だ」
空に立花のことを説明する。
まさか立花が不良方面に向かってるとは思ってなかった。こういうのってだいたいおしとやかになって帰ってくるパターンだよ。大人しい子が不良少女になって、活発でガキ大将っぽかった子供はおしとやかになって帰ってくるはずなのだ。
「そうなのか。つまり、昔の約束を今でも引きづってるバカってことだな!」
「違くはないけど……。約束はしてないんだよ」
俺はただ返事もせず聞いていただけだ。
「とりあえず、空は危険だと思うから常に百瀬さんと俺と行動。いい?」
「っしゃー! 護衛ならあたしに任せろ! 腕っぷしには自信あるかんねー!」
ほんと、頼もしい人である。




