悪意は小学三年に牙を剥く
火曜まで、俺は那智ちゃんと遊んだ。
クイズや、トランプ、将棋を教えたりドッキリを仕掛けて看護師さんを驚かせたりして叱られたり。そんな毎日だった。
そして、月曜。明日が、手術となる。
那智ちゃんは怖いのか、少しだけ元気がなかった。
夜眠るとき、手は震えている。
だけれど、手を離さないのは側にいて欲しいからだろう。俺は、手をぎゅっと握りしめた。
俺も、そのときは油断していたのだろう。間近に悪意ある第三者がいるとは知らずに。
そのまま、俺は眠ってしまった。
起きたのは、二時くらいだった。
自然と目が覚めた。なにやら、不快なものがあったのだ。
手は離れている。眠っているのだろうかと横を確認すると、少しだけ過呼吸気味の那智ちゃんがいた。
「な、那智ちゃん!?」
「はぁ…はぁ…」
おでこを触ると熱くはない。熱はないようだが、過呼吸が続いている。
俺は、急いでナースコールを押した。
数分後看護師さんが駆けつける。
「どうしました!?」
「那智ちゃんが過呼吸を起こしていまして…」
「過呼吸!?それは…栄さん、今すぐ担当医の先生に離してきて!このままだと危ないわ」
「わ、わかりました」
せわしなく看護師さんが動く。
俺は、手を握ることしかできなかった。
室内の明かりがつけられる。
「えーと……って、点滴が外れてる?あなた、もしかして点滴を外したりしました?」
「いえ、俺は真反対にいますし、両足折れてどうやってそこまで移動するのですか」
「そうよね…。これは誰かが抜いたとしか……」
ということだった。
それで、俺は考えてみる。那智ちゃんに恨みを持つ人なんていないだろう。まだ小学三年なのに、小さい子に害を与えるなんて。
だとしたら、困らせたいのは俺か?
俺はたしかに、那智ちゃんを大事にしてた。それをつけ込まれて?
こういう嫌がらせするのは一人しかいない。だけれど、あいつはたしか死んだはずなのに。
「まあいいわ!急いで手術室に運びます!」
と言って、急いで運ばれていった。
俺は看護師さんに車椅子に乗せてもらい、担当医の先生のところまでいく。
そして、携帯を取り出した。
発信相手は会長だ。今すぐ伝えなければならない。
ワンコール、ツーコール鳴る。一向に出る気配はない。多分寝ているのだろう。
寝ている。那智ちゃんが大変な状況なのに!!
と、切ろうとしたら、繋がった。
「……なんだ」
眠そうな会長の声。
俺はゆっくり会話してる暇はない。
「会長!那智ちゃんの手術が予定を早くして今行われます!早く来てください!」
「……那智の手術は今日の夜じゃ」
「誰かが那智ちゃんの点滴を外して過呼吸を起こしました!予定を早めるそうです!」
「……今行く。っ、切るぞ!」
と、電話が切れる。
そして、手術室の明かりがついた。




