妹とお風呂と怖い夜
裸の付き合いという言葉がある。
それはありのままの姿で話し合えばきっと分かち合えるだとか、仲を深めることができるとか。そんな風にできる。
だがしかし、それは同性の場合だ。
中を深められるのだろうかこの空間。
「に、兄さん。髪、洗って」
妹と二人きりのお風呂場……。
目の前には色白の肌で風呂によくある椅子に座った妹の瑞穂。そしてその後ろには俺。どちらも素っ裸である。
いやはや。なんかもう、理性やられる。
「お、おう。わかった」
「……兄さん照れてるの?」
「そ、そりゃ一応女性と混浴だしな」
「一応は余計! 瑞穂は女の子だからね!」
ぷんすか怒る瑞穂。子供かお前は。
……そうだ。子供と一緒に入ると思えば意識しないでもいい。瑞穂は子供。だれが幼女に興奮するものか。
そうだ。落ち着け。落ち着いてな。幼女だと思え。
……まって。それじゃ俺ロリコンみたいじゃん。
「なにも瑞穂相手に照れることないじゃん。血のつながった妹だよ?」
「案外血がつながってなかったりしてな」
「はは。そりゃないって。……ないよね?」
「何冗談を真に受けてんだよ。普通にないからな」
血は普通につながってるわ。瑞穂は父さんに似てるし、俺はどちらかというと母さんに似てるってよく言われる。どちらかのほうに似てるなら血がつながってるだろ。俺の親一度も別れた経験ないらしいし。
「いや。ほら。お母さんにこういわれるかもしれないじゃん。『いつから久太と血がつながっていると錯覚していた?』とかさ!」
「ああー、なんとなくわかる」
あの母さんならいいそうだ。それも不意に。
あの母さん思い出したらその場でいうからな。大事なことさえも。昔銀行で暗証番号を忘れて思い出したとたんに大声でその暗証番号言ったからな。その時は暗証番号変える羽目になったんだよな。
「だからありえなくないんだよ!」
「ありえないってのはありえないのか」
「そう! ……あれ? 何の話してたっけ」
「……あれ、なんだっけ」
なんで血がつながっていないとかそういう話になったんだっけ。
「まあいいや。兄さん髪洗って」
「あいよ。このシャンプーか?」
「うん。コンデショナーとかは自分でやるから洗ってくれるだけでいいよ」
「あ、おう」
――あれ? なんで普通に洗わされてるんだ?
兄妹水入らずのお風呂というのも乙なものでした。
ただね、俺はちょっとやばかったわけで。どこかとは言わないけど固くなってました。
「あぁー。やっぱ風呂上りは牛乳に限るねえ」
「お前はおっさんか。あと、ラッパ飲みするな。俺も飲むんだから」
「あ、ごめん。もうない」
「一パック丸々飲んだのかよお前」
1リットル飲み干したのかよ。
「さてと。兄さんとなり失礼するねー」
「あ、おう」
俺の隣に座る。
そしてテレビをつけると録画リストを開いた。
「ああ、これこれ。兄さんここにいてね」
「何見るんだよお前」
「怖いやつ」
「……ああ、そういうことか」
瑞穂は幽霊が嫌い。なくせに怖いやつは見る。でも誰かと一緒じゃなきゃ不安らしい。見るたびにいつも震えるのでゆっくりと見れない。
こういうのは大体作りものだから怖くもなんともない。俺が一番嫌なのは急に現れるやつ。怖くはないけどびっくりするから嫌いだ。
瑞穂は怖い番組をかけた。
数分がたち、怖い映像が流れる。
「兄さん……怖い」
「まだ幽霊出てねえよ……」
まだ撮影者が歩いてる途中でしょうが。
映像をみていると、急に幽霊が現れた。
「おわっ!」
「ぎゃあああああああ!!」
びっくりした……。どうも急に現れるのは心臓に悪い。
あと、泣くな妹よ。
「おわかりいただけただろうかってもうわかってるからな」
「もうやだおうちかえる……」
「安心しろ瑞穂。ここがおうちだ」
おうちなのにどこに帰るんでしょうかね。
その後も瑞穂は幽霊がでては叫びまくって、最終的に気絶した。たしかに例年よりちょっと怖かったかもしれないが、倒れるほどなのか?
とりあえず、部屋に運んでおこう。
作者は怖いやつ昔は嫌いでしたが今では平気になりました。だけどいきなり現れるのはやめてほしい。マジで死ぬ。ショック死する。




