勝負を挑まれた
「小鳥遊 久太先輩。俺と、西園寺先輩をかけて勝負を挑みます!!」
気がつくと、俺は一年生から決闘を申し込まれていた。闇のゲームでもないから命は取られないが、今なんて言ったのこいつ。
空をかけて勝負?
「断る。俺に何のメリットがある」
そんなもの御断りである。
俺が勝ってもメリットはなく、相手は負けても勝っても得するのだ。こういう不公平な決闘はしないことにしてるの。するなら闇のゲームだよ。
で、次回予告が小鳥遊死すになるから。
というか、誰だこいつ。
廊下ですれ違った瞬間に決闘を申し込むって……。ここはポ○モンの世界じゃねえんだぞ。目があった瞬間にバトル!とかふざけてるだろ。
「というか、誰あんた。俺は知らないんだけど」
「一年の高木 悠。俺もあんたの自己紹介が聞きてえ」
「……」
えらっそうだなー。
何となくムカついてきた。さっきからなんだこいつの態度は。先輩とか後輩とか関係なくちょっとだけムカついてくる。
勝手な言い分ばかりだ。どこで育ったらこうなるんだ?
というか、さっき小鳥遊 久太先輩と言ってたから名前は知ってるだろ。不公平だと思ってるのか?
「俺の名前知ってるだろ」
「先輩が一年にまで広まってると思ってるんですか」
「さっき俺のことフルネームで言ってたよな」
「ぐっ……」
バカか、こいつ。バカなのか。こいつ。
俺はその場から立ち去ることにした。空をかけて勝負だとか意味がわからねえ。
空を渡すつもりはないし、もし負けて空を渡す羽目になるのも嫌だから。受けるメリットがないからね。
あの一年は結局何だったのだろうか。
多分、空が好きで、だけど俺という彼氏がいるから勝負して彼氏になりたいとかそういうこと思ったんだろうけど……。
残念だったな。
「……」
と、空の方を見ると空も何だか思い悩んでいるようだった。
どうしたのだろう。何があったんだ?
「空」
俺は心配になったので声をかけてみる。
「ああ、久太くん」
「なんか悩んでるっぽかったから声かけたんだけど、何かあったのか?」
そう聞くと、空はため息をついた。
「実はね、勝負を挑まれて……」
お前もか。
「光島って子がね、久太くんが好きだからって……。私は断ったんだけどちょっとしつこく迫ってきて……」
空は頭を抱える。
「ちょっと怒鳴ったの。みっともない…。久太くんが取られるかもって思ってつい怒っちゃった……」
怒ったことに後悔しているようだった。
空は人を怒ったことがないから、後悔しているのだろうな。人を傷つけたかもしれないとか思ってるのだろう。
まあ、怒ることは決しても悪いことじゃないと思う。というか、怒っても問題はないだろう。
「私、怒りっぽかったのかな…」
「いや、空は温厚だぞ。俺が取られるかもしれないって危機感を感じて怒ってくれたなら俺もちょっと嬉しいしな」
これは本当。
俺を思って怒ってくれたんだ。空は誰にも渡さないし、空と別れる気もない。
「とりあえず、もうそんなことは忘れよう。気を紛らわしにとりあえず、もう帰ろうか」
「う、うん…」
と、帰ろうとバッグを持ったその時だった。
廊下を走ってきた先生に呼び止められる。
「すまない。小鳥遊、西園寺。ちょっと至急手伝ってくれ」




