ブラウニーとジャック・オ・ランタン(後)
この際だ。やってしまったものは仕方無い。
短い付き合いだったが、君達の事は忘れない。このドロップアイテムっぽいランタンは大切に使わせてもらおう。
「今回は仕方無いけど次はちゃんと本人の許可を貰ってからしろよ?」
後ろの方で『いや、許可もらうとか以前の問題じゃ・・・・』と言ってる奴がいたような気がしたがそんな事は無かった。
「それじゃあブラウニーは料理の続きに戻ってくれ。ニクマンとパトリックはこのまま飾付けを頼む。俺はこの死体を何とかする。」
「かしこまりましたであります。」
端から聞くと正気を疑いそうな会話だ。とりあえず死体は埋めて隠すとして、これが終わったらちゃんとした墓に埋葬してやろう。埋葬したところで天国にも地獄にも行けないだろうけど。
首無し死体を拾うと思ったよりも軽い。体だけとは言えカボチャとかスイカ位の重さがあると予想していたが、良くてリンゴや梨と言ったところだろうか。それに体も丸っぽい何かがある感触がするだけでマントの中がみえない。
覗いてみても大丈夫だよな?見たら死ぬとか無いよな?これが人間だったら(社会的に)死ぬけどこれはモンスターだし、研究の一環だから大丈夫なはずだ。これがアウトなら生物の研究とか出来ないもんな。
おっと、このまま突っ立ってるだけで時間が無くなっちまう。
そういえば煮込みとかってかなり時間かかるやつじゃなかったっけ?・・・・まぁ、彼女なら何とかしてくれるに違いない。
『マスター・・・てる?・・い』
ん?誰か呼んだ?
「誰か呼んだか?とか言ってもこの場で声が出せるのは俺かお前位しか居ないよな?何か用?」
『?いや、僕は呼んでないよ?』
「じゃあブラウニーか?」
『彼女なら君を呼ばずにこっちに来るんじゃないかな?』
確かにそうだ。それじゃ残るはニクマンか?
ニクマンの方を見るが、自分ではないと体を振る。ニクマンが体を揺らすとぶるんぶるんと胸の肉が揺れる。
元の世界でダチが言ってた。『見ておけよ。あの胸のところにある肉の中には俺たち男のロマンが詰まってるんだ!!』って。
それはさておき、誰も話しかけてきていないとするとあの声は何だったのだろうか。まさかこの死体が語りかけてきたとかそんなホラーな展開じゃないだろうし、今まで死にスキルだった霊感の出番か!?
それなら早速とスキルの使用を念じる。どうやら霊感はパッシブだけどONとOFFが切り替えられるタイプのスキルらしい。地味に便利
さて、これであの声の正体がわかるはずだ。
「お待たせして申し訳無いであります。何か御用でありますか?」
うぉっ!!こいつ今どっから出てきやがった?ビックリしたじゃないか。
「いや、呼んではないぞ。ただ、誰かに呼ばれたから返事したけどパトリックもニクマンも呼び掛けてないし、それじゃ君が?って話になっただけだ。」
「了解であります。了解ついでにマスターが持ってるプランターにこの種を蒔いてほしいであります。」
プランター?そんなもの出したっけ?それに今持ってるのはジャック・オ・ランタンの首無し死体なんだが。後、種はどこから出した?
「この種は私が最初から持っていたものであります。それにマスターが持ってる物は高品質なカブを育てるプランターであります。ちょっと珍しい喋るプランターであります。」
「おっおう、分かったとりあえず植えとくから調理に戻ってくれ。」
そう言うとカボチャの種と「もっとジャック・オ・ランタンを出してほしいであります。」と言う言葉を残して持ち場へ戻っていった。
自己紹介すらさせてもらえずにプランター扱いされるジャック・オ・ランタンが可哀想に見えてきた。
今週の目標:リアルを更新しない言い訳にしない




