不遇な送り犬とダブルウェディング
パッと見お子様な六花が第1婦人で更にこの子が第2婦人候補なんてまるでロリコンじゃないか。
《無事接触できた。今説明してるから早くパレード始めて欲しいな。》
パレードとか言うんじゃない。あれは立派な災害だ。
《なんでも良いから早くしないと移動始めるよ。》
俺は作戦のためなら偽装結婚することも辞さない策士の鏡なのだ。
・・・・今回の作戦を受け入れたら後に退けなさそうな気がするのは気のせいと言うことにしておこう。
「分かった。すぐに準備するから40秒稼いでくれ。」
《分かった。》と短い返事の後に念話が切れる。
「外に出るわけだけど、冒険者の近くを通るやつは『冒険者が2匹罠にかかりましたぞ。』『ほぉ~、それはめでたい。姫の婚約に人間をお出しできるとはまことにめでたい。』みたいな会話をしてくれ。あくまでも内緒話のような感じで小声でたのむ。」
要は噂になれば良いのだ。『行方不明になった2人が向かった先に不気味な集団が向かった。』とか『不気味な結婚の行列が冒険者2人を捕らえた。そして実際に行方不明者が出ている。』こうなれば冒険者達も少しは危機感を持って冒険してくれるんじゃないかな?
さてと、次はこの子にどんな格好をするのか説明するのと名前・・・・・って
「もう着替えとるがな!!」
よりによって白無垢!?どこで白無垢の知識を得たのだろうか。いや、その前に結婚する気満々じゃないか。お互いの事をもっと知ってからとは何だったのか。
《主様!見てください!!私、綺麗ですか?》
oh・・・・これはお嫁さんごっことかそんなレベルじゃない。こういうのって子供が背伸びして大人ぶってるようななんかこう、微笑ましい感じになるんじゃないの?
「あっあぁ、凄く似合ってるよ。まるでお姫様のようだ。」
「似合ってる」の辺りで照れながら喜び、「お姫様のようだ。」で一瞬フリーズしたあと顔を真っ赤にしてそれでも嬉しそうに「えへへ。」と笑う姿は思わず新しい扉を開きそうになる。
くどいようだか、俺はロリコンではないし、ロリコンになる予定も無い。
『それでは皆の者、主殿と伴侶達の結婚のパレードへと参ろうではないか!!』
おっさんが宣言すると辺りがここ1番の歓声に包まれる。
「ちょっと待て!伴侶"達"?」
ニヤつくゴーストや愉快そうに骨をならすスケルトンが左右に別れていく。その姿はモーセが海を割るようだ。そして、奥の方から出てきたのはこれまた白無垢に身を包んだ六花だった。
「マスター。これは一体?」
普段はあまり表情を変えることの無い六花もさすがに困惑しているようだ。
「何が起きてるのか全く理解出来ないのはわかってる。だけど今は説明をしている暇は無いんだ。どうか何も言わずについてきて欲しい。」
俺の一言に静まり返るモンスター達。
こいつらさっきから盛り上がったり静まり返ったり忙しい奴等だな。
顔を紅く染めて小さく「はい。」と答えた六花を見てまた盛り上がる面々。
『今ここに、主殿と六花殿が夫婦の誓いを立てましたぞ!!』
『『『おおおおおおおおお!!』』』
本当に楽しそうだなこいつら。
《何が起きてるの!?こっちまで何かすごい叫び声がきこえてきてるよ!?作戦はどうなるの!?》
忘れてた。
今回こそはシリアスに行くぞ!
と思ったけどそんな事は無かった。




