踊る会議と作戦
おっさんがしょんぼりしているとその回りにウィルオウィスプが集まり始める。
しょんぼりしてるおっさんを慰めるなんてあいつらはやさしいなぁ。
『今戻ったよ。』
《ただいまぁ~》
ちょうど良いところに戻ってきたな。直で相対した敵の感想を聞かせてもらおう。もしかしたら攻略のヒントになるかもしれない。
「早速で悪いけど、アイツと直接相対した感想を聞かせてもらえないか?」
『感想?』
「あぁ、例えば魔力の感知を苦手そうにしてたとか、理性が無くなってる間は真っ直ぐにしか走らないから急な方向転換が出来なくなってるとか。何でも良いから感じたことを教えて欲しい。」
少しでも多く情報が欲しいただこの一言に尽きる。
『何か感じたことって言われても逃げるのに夢中で少しずつ早くなる事と素早くなるにつれて理性がなくなっていく感じはしたね。』
「そうか。理性を無くす代わりにステータスを強化するスキルか何かの線が濃くなったな。
それと、お前が時間を稼いでくれたお陰で皆が安全に逃げることが出来た。ありがとうな。」
彼は俺に課せられた使命を果たした次は俺が約束を守る番だな。
とは言ったものの現状やつを追い払う策はほぼ無いと言っても過言ではない。どうしたものかと考えているとウィルが念話で話しかけてくる。
《あのひとぼくのいばしょさがせなかったよ~》
それはただお前の存在に気が付いてなかっただけか、お前より目の前のパトリックの方が価値があると踏んだんじゃないか?
《あとねぇ~ぼくのすがたをみてすごいうれしそうなかおしてた~》
嬉しそうな顔、まさか、ウィルにも何かしらの価値を見出だしてたのか?
「その嬉しそうな顔をしてたとき何か言ってなかったか?」
《んっとねぇ~、「すがたをみせないならこのだんじょんのくさのはをわけてでも探し出してやる」っていってた~。》
草の根分けてでも探し出すって完全にロックオンされてるじゃないか。でも、今の証言からすると奴は感知系のスキルは無さそうだな。そうなると暫くこいつらを探しにダンジョン内をうろつく可能性が高いな。
『主殿、ここはやはりゲートを使うべきかと。』
おっさんはまだそれを言うか。
「ゲートを使うとして何処に設置して、ゲートを何処に繋げる気だ?」
『1ヶ所に作ってそこに誘導すればひとまずは追い払えますぞ。ゲートの先は馬車で一月程の国にでも一方通行で置いておけば最低でも一月は時間が稼げますぞ。』
「一月後どうするつもりだ?それに、これは1度使ったら次からは使えない手だろ?」
『一月の間に得られたダンジョンポイントで皆を強化すれば心配はありますまい。』
時間を掛けて強いモンスターを育てて無法者を追い払う構想はあることはあるが、それをするにはダンジョンポイントが足りない。勿論一月貯めた程度では足しにもならない。
「確かにその考えには賛成だ。」
『おお!!それなら・・・』
おっさんはようやく現状を打破できると喜びの表情を浮かべる。
「だがダメだ。」
しかし、俺はその策を今は取れない。
『何故です!?ここまで滅茶苦茶にされているのですぞ!!』
「一月で強化できるレベルなんてたかが知れてる。せめて半年とか年単位の時間が欲しい。」
進化やダンジョンの改造で大量のポイントを使った。ここのダンジョンに使えるのはあと、500ポイントも無い。
《「すがたがみえないのはまほうですがたをかくしているにちがいない。」っていってたぁ~》
ここでウィルから新しい情報が出される。新しい情報は有り難いが、もう少し早く出して欲しかった。
「この話を聞くと奴は感知とかそういうサポート系が苦手そうだし、幻術にでも掛けたら何とかなりそうな気がするけどお前らの意見を聞きたい。」
探知、ステータス異常に対する対策をしないとダメってことは今回は幻術とかでなんとか出来そうだな。
『僕は悪くないと思うよ。でも、さっき君が言ってた"使い捨ての策"の気もするけどね。』
まぁ、そうだろうな。今回幻術で騙せたとしても、次も幻術で騙せるとは限らない。さらに言うならこの幻術を扱うモンスターが居るってことでもっと執拗に狙ってくる可能性もある。
『ワシも彼の"使い捨ての策"と言う言葉に賛成ですな。彼も言った通り幻術はネタが割れてしまえば対策を立てるのは簡単故に。』
ほほぅ。おっさんはどうしてもゲート作戦を推したいようだな。理由を聞いてみるか。
「ゲート作戦を推したいみたいだけど理由を聞かせてくれないか?」
『冒険者は「宵越の金を持たない」等と宣うような連中故に、馬車で一月以上のところに飛ばせば最長で一年は時間が稼げると断言しますじゃ!!』
成る程。最低でも一月、最長で一年稼げるなら此方でも良いな。一月あれば幻術を覚えたモンスターを呼び出せるだろうし、一年もあれば幻術を覚えたモンスターもそれなりには育てられるだろう。
「よし、分かった。今回はおっさんの作戦で行こうと思う。俺はダンジョンの改造を担当するから細かい指揮はおっさんに任せる。」
『主殿、本当によろしいのですか?』
「お前が進言した作戦だろう?まさか、指揮はできないかなんて言わないよな?」
俺で言葉におっさんの闘志に火が付いたのか指示を飛ばし始める。
『主殿はゲートの部屋を作るのは少し待って戴きたい。次にパトリック殿にはまた囮役をしてもらう。ウィルはパトリック殿のサポート、スケルトン共は墓場で待機し、冒険者の足を掴んだりの妨害を担当してもらう。』




