産地直送、取れたて新鮮
短いながらも2話目です。
気がつくと薄暗い森の中に一人立っていた。
「助手付けてくれるんじゃなかったのかよ。」
そう、付けてくれると言っていた助手が居ないのだ。夢の中だけど孤独である。
どこかも分からない森の中、どの方向に進めば街なりダンジョン予定地なりに着くのか分からない。ついでに持ち物もない。これは完全に詰んだパターンだ。夢でも許されない。
「とりあえずアレをやるか」
道に迷った時の強い味方『棒が倒れた方向に進むやつ』である。
大丈夫だ、俺はこれまでこうやって道を切り開いてきた。これからもそれを続けて行くだけだ。
「枝よし、風よし、地面よし、準備よし、いざ行かん俺のダンジョンへ!!」
「柳 八雲様ですね?」
「そうだけどちょっと待ってくれるかな?
今後を占うとても大切なところなんだ。」
「はい、かしこまりました。」
良い返事だ。大変よろしい。でも今はそれどころではない。失敗すれば更に道に迷う。そうなればあとは目が覚めるまで森の中を歩き続ける夢を見るだけだ。ハイキングするだけの夢なんて嫌だ。せめて異国情緒漂う街の中を散歩したい。
枝から手を離す。
「道は示された。」
そう言って俺は回れ右をする。
・・・・子供がいる。もう一度回れ右をして枝を確認する。俺の後ろを指して倒れている。今度は回れ左をしてみる。子供がいる。
まさかこの子が俺のダンジョンなのか?
そんなわけ無いか。偶然こんなタイミングでこんなところに迷子がいるなんて。
かわいそうに。とりあえず話だけは聞いてみようか。
「迷子かな?お父さんかお母さんは?」
「迷子ではありません。私はマスターをお迎えにあがりました。」
「俺はマスターじゃないぞ?」
「え?でもさっき『柳 八雲様ですか?』って聞いたら『そうだけど』って認めたじゃないですか」
「うん?確かに俺は柳 八雲だけど君のようなお子さまにマスターなんて呼ばれる謂れは無いぞ。」
「え?でも、だって、え?別人?」
何か色々と悩み始めた。俺もマスターなんて呼ばれる心当たりが無いし。
「とりあえず名前教えてくれない?このまま君とかじゃ不便だし。」
さっきまで人違いかどうかで悩んでた顔が何とも言えない曖昧な表情になって一言。
「名前はありません。」
「無いの?」
「『新しくダンジョンマスターになる柳 八雲の補佐をするように。』と言われてここに送り込まれましたので。」
「送り込まれる前とかなんて呼ばれてたの?」
「作られてすぐのことでしたので知識はあっても歴史はありません。」
産地直送の新鮮な助手だった。
「こちらへどうぞ、マスターの住居を確保しておきました。」
しかもけっこう有能そうだ。
「だからあそこに居なかったのか。でも、今回は良かったけどもしかしたら俺が移動したあとだった可能性もあるんだぞ?」
「その点は大丈夫です。詳しい話はまず拠点について一息入れてからにしましょう。」
この調子だと本編開始がいつになるのか。




