仲間と帰路
パトリックにここのダンジョンの指揮権を付与する。他にすることは今のところ何もない。
「それじゃ、あとは頼んだぞ。」
『任せてよ、ここまでお膳立てしてもらったからね。君が少しでも楽が出来るように頑張るよ。』
嬉しいこと言ってくれるじゃないか。
「頑張りすぎたせいでまた死にましたなんてのはやめてくれよ?」
『大丈夫、僕らは既に死んでるから過労死とは無縁だよ。それよりも君の方が心配だな。まだ生身でいるんだから過労死するなら君の方だろ?』
「俺が死んだらゴースト化するだけだからな。ダンジョンマスターが生身か霊体かが違うだけで何も変わらないさ。」
『それだとお互いに心配する必要なんて何も無いじゃないか。』
二人で笑いあう。まさかゴーストとこんな冗談を言い合えるようになるとは。
異世界での生活は面白い。サポート役の雪女は時々怖いこともあるけど、笑い会える仲間とも出会えた。
「そうだ、忘れるところだった。」
『?何をだい?』
不思議そうな顔をしてるゴーストを対象に死霊育成を発動する。選択する進化先は送り犬だ。
ドッペルゲンガーに進化させようとしたがこっちにした方がMP的にも楽だったのでこの進化先にした。
何かされたことは分かるようだが、自分の身に何が起きたのか理解できていないパトリックに説明をしてやる。
「今、俺のユニークスキルで進化先を固定したんだ。」
『なんほど。これで僕はドッペルゲンガーになるのかな?』
「元々はそのつもりだったんだがドッペルゲンガーだけで遊ばせておくよりも、他のに進化させて色々とさせた方が良さそうな気がしたからさ、送り犬ってやつにした。」
怪訝そうな顔でこちらを見てくる彼に説明を続ける。
「本来ならこの妖怪に変化の能力は無いんだけど、俺のスキルで変化の能力も付けたから死んだ振りと行方不明者の振りは変わらない。それに加えて冒険者の護衛も任せるよ。」
『護衛?』
「そう、護衛。ただ護衛するんじゃなくて、冒険者の後ろを一定の距離を保って付いていくんだ。できれば、襲われるんじゃないかってビビらせてほしいけどそこは任せるよ。」
進化先の説明を終えた辺りで六花が迎えに来る。
「そろそろ出発しましょう。こちらのダンジョンの作成が終わってもマスターには座学を初め、戦闘訓練、サバイバル技術等の習得、新ダンジョンの作成計画、幹部モンスターの育成とやることがたくさんあります。」
「ちょっと待ってくれ!そんなスケジュールを組まれたら俺は一生ダンジョンから出られなくなるぞ!?」
ダンジョンを作るための取材旅行とか考えていたんだが取材してる暇が無ぇ。
「安心してください、座学ではマスターの頭に直接知識を流し込みますのでそこまで時間は取りません。」
なんかすごい怖いこと言ってるんですけど。
六花は「大丈夫です。このスケジュールをこなせば半年後には座学とサバイバルの項目は教えきれますので。」と言っていたが人間の脳に限界があるのを知らないのか?知らないんだろうなぁ。
「失礼いたします。サチ達も待っていまので行きますよ。」
彼女に手を引かれる。この状況がデートなら素直に喜べたのに、現実は残酷である。
「困ったことがあったら相談してくれ。」
俺はそう言い残し引きずられるように帰路に着くのだった。
ちょっとした番外編を挟んでから第一章に入りたいと思います。
第一章はプロローグから半年後の設定で進めたいなと考えています。




