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墓場とモデル

ゆっくり移動してたこともあって目的の場所へ着いたのは、2時間程歩いてからだった。

途中リンゴによく似た果物を発見して食べたくらいで休憩は無かった。味はリンゴよりもさくらんぼに近かった。


「一休みしてからダンジョン作りを始めたいと思うんだが。」

「マスター、今日はまだ何もダンジョンの仕事をしていません。休憩を挟むならまず、設置するものを設置してからにしましょう。」


六花に急かされる。

ウィルオウィスプ達も「早くしろー!!」とばかりに動き回る。パトリックに助けを求めて視線を向ける。


『そうだね。六花さんの言うとおりだ。僕らは君の話でどんなダンジョンにする予定なのかは聞いてるけど、実際にどんな配置で何があるのか分からないからね。早めに作ってもらえるとありがたい。』


パトリックお前もか。

一休みしたいという俺の願いは反対多数で否決された。

こうなったらさっとやってぱっと終わらせて一休みするんだ。

そうと決まれば早いものだ。ダンジョンの一番奥に古い石碑を設置して蔦を絡ませる。次に石碑と入口を一直線に結ぶ道を作る。墓石の配置は、縦10列、横10列で石碑の道を挟んで左右に別ける。ついでに何基か倒しておく。


『お墓を立てると聞いてたんだけど、これは何君が住んでいた所のお墓かい?あと、お墓の後ろにある板には何の意味が?』

「あぁ、俺の住んでいた所のお墓を参考にした。

お墓の後ろの板は『卒塔婆』ってもので、簡単に言えば供養の証みたいなものだ。そのうち時間が出来たら詳しく説明するよ。」


卒塔婆の意味なんて宗教観から説明しないと伝わりにくいからな。

今はダンジョン作りだ。忘れそうになるが、ダンジョンを作った後何体かモンスターを呼び出さなきゃならないからな。

次は忘れ去られて手入れをされていない演出だ。倒した墓の所に木を設置する。枯れ葉を撒いて年期をアピールする。


「マスター宜しいでしょうか?」


静かにダンジョン作りを見ていた六花が話しかけてくる。


「なんだ?」

「ダンジョンはこれ以上広げないのですか?

今の状態では冒険者を驚かせるどころの話ではありません。」


まぁ、回りの森に比べたら微々たる面積の墓場ダンジョンだ。空間をもっと広く使うべきと考えるのは当然だ。


「大丈夫、この墓場はダンジョンの玄関みたいなものだ。本番はあの石碑から先の森だ。ここを通過できないような奴が来ても仕方無いからな。」


そう、今はまだ玄関しか作っていない。ウィルオウィスプ達はあそこが主な仕事場になるが、ゴーストやスケルトンはあの奥に作る洞窟型ダンジョンでスタンバイするのだ。


「墓場ダンジョンと言ったが、墓場で終わらせる気はない。俺の居た世界じゃ墓場の下は冥界になってるって言われてたこともあったんだ。先人達のその発想を利用しない手はない。」


ここで休憩がてら六花、ゴースト、ウィルオウィスプ達にさらに詳しい説明をする。


「今回俺が作るダンジョンは俺が生まれた国の黄泉比良坂って話を参考に作る。」


黄泉比良坂の話をかいつまんで説明する。


「つまり、宝を探して洞窟に入った冒険者をスケルトンやゴーストで追いたてるって訳だ。」

『だが、いくら数の暴力で追いたてると言っても高ランクの冒険者にそれは通じないよ。今は分からないけど少なくとも僕が生きていた頃は一人でダンジョンを踏破するレベルの奴等がわんさかいたからね。』


彼の言うことも一理ある。


「それについては考えがある。だが、今の状態では対策の取りようが無いんだ。だから暫くはダンジョンポイントを貯める事に専念した活動方針で行くぞ。」

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