筋肉痛と2日目
「痛てぇ。これ完璧に筋肉痛だ。」
よくよく考えてみれば普段あまり運動しない奴が戦闘(訓練)したり長距離の移動、しかも足場の悪い森の中を歩けばこうなるのは当たり前のことだ。
「寝る前にストレッチでもしとけばまだマシだったのかもしれんな。」
それにしても進化を選択してもすぐに変化が出るわけじゃないのか。あるいはレベルを上げないといけないのか。
どちらにせよサチには悪いことをしたな。タイミングを見計らってもう一回謝っとくか。
「マスター、そろそろ起きてください。」
六花が俺を起こしに来る。もし、今の俺が筋肉痛だと気付かれたら今後予定されているであろう訓練がもっと激しくなる可能性がある。悲鳴をあげる筋肉に鞭打って起き上がる。
「おはよう。よく眠れた?」
極力不自然にならないよう心掛ける。
「はい、夜営の見張りはゴーストとウィルオウィスプにも協力していただきましたのであまり負担はありません。」
見張りを立ててたのか。相談してくれれば俺も協力したのに。
ん?夜営で見張りを立てる必要があるって危ない野生動物がいるってことか?
「この辺りって見張りを立てないと危ないの?」
「そういう訳ではありませんがマスターのダンジョン方針で考えた場合、夜襲をかけるのも1つの手段だと思ました。」
「なるほど、それも面白そうだ。だが、それはそれとして皆が夜営をする必要は無いんじゃないか?」
「知識で知っているだけなのと実際に体験して覚えるのでは作戦の実行に差が出ると私は考えています。」
六花は鬼だと思ってたが、鬼軍曹だったようだ。
「そうか、折角訓練してもらったんだし、有効に活用させてもらうよ。」
そう言って立ち上がる。痛みは我慢して表に出さないようにする。
「皆おはよう。俺と六花の朝飯を探しながらのダンジョン予定地に向かって移動を始めるぞ。」
さて、移動はいったんに乗って飛びたいがそれは六花が許してくれないだろう。だが、俺には秘策がある。
「おーい、ウィルオウィスプ達集まってくれ。」
号令をかけたらすぐに俺の周りに集まり出す。
移動速度が遅いこいつらに合わせて移動すれば「ウィルオウィスプ達に合わせて歩いてるなら遅くても仕方ないよね。」って言い訳ができる。
「まだ名前を付けてないやつらが居るとおもうがこれからする質問にイエスなら縦、ノーなら横に揺れてくれ。」
歩き始めた俺に対して六花が声をかける。
「筋肉痛にならないよう、訓練の内容に筋トレを取り入れますね。」
あぁ、バレてたのね。俺の作戦は無駄になり、テンションを上げたウィルオウィスプ達に囲まれて名前を考えることになった。
「勘弁してくれ。」
俺のダンジョン作り2日目は謀と(俺の)悲鳴で始まった。




