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察知されない最強職《ルール・ブレイカー》  作者: 三上康明
第6章 スパイ大戦争

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生活の基盤

書籍版「察知されない最強職2」の店舗特典が公開されていました。

https://herobunko.com/news/8680/

セリカのカードが欲しいんですが? 著者特典でもらえませんか? え、買いに行け?

あとソリューズもかっこいい……ふと思ったんですが私は「東方四星」が好きなんだなって。新大陸に来てまったくでてこなくなりましたが。

そんなわけで書籍版は今週金曜日発売です。完全オリジナルストーリーです、よろしくお願いします!

 それから1週間、ヒカルは街の外に出て狩りをし、ラヴィアはこちらの大陸の言葉を学び、ポーラはコウの世話をしたり呼ばれると出ていって回復魔法を使った。

 ヒカルは、この街で彼女の回復魔法を解禁したのである。

 これには理由がある。

 1つは、このドリームメイカーが運命共同体だとすると、治癒してまずい人間というものがそもそも存在しないだろうということ。裏切り者もいるらしいが、誰が誰だかわからないので今はそれは考えから外しておく。

 もう1つは、回復魔法の訓練としてちょうどよかったのだ。ポーラはヒカルからいきなり強大な回復魔法の力を与えられて、それを力任せに使ってきた。

 幸い今は仮面をつけているので最終的な身バレをすることはないだろうしポーラが回復魔法を使うときには騎士リュックたちには内緒にしてもらうことにしてあった。

 回復魔法でできること、できないことを学ぶ、いいチャンスだ。

 ちなみに魔法の使用にも円貨が支払われるのでそれをポーラの小遣いにしようという魂胆もある。


「ふーむ……川幅が広くて渡れないな」


 ヒカルはその日、半日かけて北上していた。モンスターの変化を調査するためである。

 とりあえず動植物の変化は見られなかったが川の出現によってその先へ進むことができなくなった。

 川幅は100メートルはあるだろうか――相当に大きい川である。


「街に戻るかな……いや、ちょっと遠くを見てみようか」


 きょろきょろと周囲を見ると、小高い丘になっている場所があり、そこには巨木が立っていた。

「瞬発力」5と「筋力量」1があれば大抵の木は登れてしまう。するすると上っていくと樹海の上にひょっこり顔を出すことができた。


「おー……」


 見渡す限りの森、森、森だ。

 だが多少の変化もある。東はなにも見えなかったが、北は川の先の森をさらに越えていくと赤色の山が見える。そして西には、


「……あそこか」


 開けた場所があって、そこは森の密度が薄い――過去の入植地だ。

 ただそこに行くにしても川を渡らなければならないだろう。

 ちなみに入植地の向こうには海がうっすらと見えた。


「どうやって川を渡るかなー。やっぱり船に乗せてもらって海から行くのがいいんだけど、なんのためにあそこに行きたいのかって聞かれるよなー」


 とか考えていたときだ。


「……ん?」


 廃墟となっている入植地の北側、樹海の屋根を抜けてひょろりとした柱のようなものが立っている。


「……塔?」


 それは明らかな人工物だった。




「やあ、やあ、ここの席いいですか? いいですね」


 その日の夕暮れ、食堂「ザギン」に現れたドゥインクラーはまっすぐにヒカルたちのいるテーブルにやってきた。

 もちろん、ドゥインクラーはこの街では相当に高い地位にあるために「ザギン」にいることなどふつうならあり得ない。シルバーフェイスが毎晩顔を出してここで食事をしていると聞いてやってきたようだ。

 周囲に座っている客たちは迷惑そうな顔である。


(わかるよ。変な愚痴とか言えなくなるもんな)


 と思っていたヒカルであるが、まさかラヴィアとポーラ、それにコウまで別のテーブルに行ってしまうとは予想外だった。そちらについて行こうとしていたジンの首根っこをつかんで座らせる。


『離せ、シルバーフェイス! 別のテーブルに呼ばれてる!』

「お前を呼んでいるのはこのテーブルだよ」

『なにが悲しくて気を遣いながら酒飲まなきゃいけねーんだよ!』

「空気を読むのも上官の仕事だろうが」


 ドゥインクラーが驚いている。


「ふたりともお互いの言葉、わかるか?」


 ヒカルもジンも言葉がわかっていないのに話が噛み合っていたらしい。

 ちなみにジン以外のドランとズズンは家庭があるらしく、前に顔を1回だけ顔を出したきりだった。


「そうだ、ドゥインクラーもいるならちょうどいい」


 ドゥインクラーとジンとヒカルという盛り上がらなさそうな組み合わせではあったし、ドゥインクラーの取り巻きも隣のテーブルでこちらをちらちら見ているし、ラヴィアたちはウィーザとの話が盛り上がっているし――ヒカルとしてもドゥインクラーの相手はさっさと終わらせたいと思っていた。

 彼がここに現れたということはなんらかの目的があるのだろう。ならばヒカルも先に聞いておきたいことがある――大木の上から見えた塔のことである。


「塔……ですか。知りません。聞いたことも、ないです」

「滅びたほうの街は調査がされているのか?」

「かつては何度も調査ありました。でも、得られるものがだんだんなくなっていって、直近の調査だと……10年以上前かもしれない」

「そのとき塔はなかった?」

「たぶん。でも調査は軍の仕事。私あまり知らない」


 ドゥインクラーは、言葉がわからずつまらなさそうな顔でちびちび酒を飲んでいるジンに視線を向けた。そしてヒカルの話したことをかいつまんで説明したようだ。


『塔? 知らね……知りません。軍では把握していないと思いますよ』

『遠征のときにも見なかったのか?』

『見ませんでしたね。誰かが見ていたら話題になっています』

「というわけです。シルバーフェイス」

「いや、わからないから。ちゃんと通訳しろよ」


 とはいえジンの様子を見ていれば「塔を知らないのだろうな」ということがわかるのだが。


「ジンも知りません。ちなみにシルバーフェイスが見た塔は海から見えるほどに大きいもの?」

「ああ。見えるはずだよ」

「……妙です」

「おかしいよな、確かに船からも見えなかった。まさかこの数日で出来上がったということはないだろうし――ああ、いや、可能性としては光学迷彩もあるのか」

「巨大な建物、隠すほどの魔石がないです。あっても、塔を隠したり見せたりすることの意味がないです」

「そうなんだよなあ……。そう言えば魔石、って言ったか? 光学迷彩とかの技術はそこから力を得ているわけだろ。魔石はどこで採れるんだ?」

「採掘場がありますね。場所は教えられませんが」


 魔法が使えない彼らにとって、魔術は重要なものなのだ。武力のために使われることが多いのは強力なモンスターを倒すためなのだろう。

 ヒカルが思い出すのはヴィル=ツェントラでディーナを案内したときだ。彼女は魔導ランプにいたく感動していた。あの感動は、技術力にというよりもあれほど大量の精霊魔法石を惜しげもなく使っていることにたいしてなのだろう。

 だからこの街は街灯がない。魔石は高級品なのだ。


「……魔石とやらの産出量が少ないんだな」


 魔法が使えない。頼みの魔術も、動力源となる魔石――おそらく精霊魔法石――が少ない。


「それに加えてヤママネキが襲来したり、裏切り者がいたり、今度は謎の塔が出現……アンタたち、よく今まで生きてこられたな」


 にたりとドゥインクラーが笑う。


「それはもう、必死で。使えるものはなんでも使い、食べられるものはなんでも食べて。生きてきた。命は尊いです」

「それで?『使えるものを使う』ために今日もここに来たんだろ? おれ(・・)になにか用か?」

「話が早いからシルバーフェイスはすごくいいです。簡単な話です。獲物を売らないで欲しい」


 獲物を売るな――とは、ヒカルがほぼ毎日、森の中で獲ってきた動物のことだろう。


「ほう、それはまたなんでだ?」


 ドゥインクラーの申し出に興味を惹かれた。自負するわけではないがヒカルが大量に獣を仕留めるので街の人はたいそう喜んでいる。獣の肉が多く安価に流通するようになって食卓が豊かになるのだから喜ぶのも当然だ。

 実際、ヒカルが大量に動物を狩れることがわかったために夕方には多くの荷馬車が街の外で待機するようになった。

 それを止めろというのだ。


「円貨、貯め込まれると困る。シルバーフェイスの使える量、少ない」

「あー。そっちか。でもそれほどじゃないだろ?」

「今は……2万枚程度。それでも個人が所持するには多すぎるしこれから増えるでしょう? 違うものに交換するといい」


 このドリームメイカーでは経済を回すことにおいて「お金」が副次的な扱いなのだ。物々交換が主流で円貨はあくまでもオマケ、その流通量は少ない。

 ではどうするのかというと、


「家、買うといい」


 ドゥインクラーが笑顔で言った。


「急に話が大きくなったな。いくらなんでも円貨2万枚程度じゃ買えないだろ」

「納めた獲物の数に応じて負債が減る」

「よく負債なんて言葉知ってたな」


 さすが財務大臣(兼務)。


「まあ、買ってもいいよ。別にここで金稼ぎしたいわけじゃないから」

「そうか? それならよかった」


 見るからにホッとした様子のドゥインクラーだった。どうやらヒカルに持ちかけた取引はかなり無理があると自身も感じていたらしい。ヒカルにとってみれば異国もいいところのこの地で、家をもらってもあまり意味がないのは明らかだ。


「そのかわり」


 とヒカルが切り出すと、ドゥインクラーは「ウッ」とうめいた。なにか条件が追加されると身構えたのだろう。


「そんな顔するなよ。いい物件を紹介してくれよって言いたかっただけだ」

「それなら――大丈夫。任せるよい。では明日使いを出す」


 するとドゥインクラーは立ち上がるとそそくさと部下も連れて去っていった。

 そんなに警戒しなくてもいいのにとヒカルは思っていたが、


『あぁん? 今ドゥインクラーの野郎がいなかったか?』


 床を揺らしてクマ店長がやってきた。服が血まみれなのは動物をさばいていたからだろうが、衛生的によろしくないので奥に引っ込んでいてもらいたいものである。


『チッ、あの野郎……店の拡張であれこれ面倒くさい注文つけてきやがったこと、ここで文句言ってやろうと思ったのによ』


 ドスンドスンと床を揺らしながら去っていく店長。

 どうやらドゥインクラーにとってクマ店長は出会いたくない相手だったようだ。


(にしても、僕が家を買うとはね……)


 住宅購入に関して、ヒカルとしてはどうでもよかった――それで波風が立たなくなるのならそれでいいだろうというくらいのつもりだったが、ラヴィアとポーラは非常に喜んだ。


「本棚を置くべきね」


 とラヴィアが鼻息を荒くし、


「キッチンが広いとうれしいですっ」


 とポーラもまたうっとりとした。


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