97話 重格
「っ!?」
俺は山西に対して底知れない恐怖を感じた。
「気、、、」
添島がオーラドームで決めにかかろうとしたその時だった。
「待て!添島!後ろに下がれ!」
「っ!?」
添島は驚きの表情をしながらも圧縮しかけていたエネルギーを地面に向かって放出し離脱する。そして、キングオーラゴリラも添島を逃がさないとでも言うように衝撃波を放つ。だが
「、、、、、、」
「なっ!?」
そこに山西がふらふらとした様子でいや、それでも速い動きだ。不安定な走りでキングオーラゴリラの所に向かって行き衝撃波をまともに食らった様に見えた。だが、山西は走る勢いをそのままにキングオーラゴリラの懐に入り込んだのだ。その様子に添島は驚きの声を上げる。何だ?今俺も山西がキングオーラゴリラの衝撃波をまともに食らった様に見えた、、、だが山西が衝撃波を食らった瞬間山西の中の別の何かが一瞬吹き飛んだ様な気がした。だがその吹き飛んだ何かは直ぐに山西に戻ってそのままキングオーラゴリラの肉体を槍が貫いたのだ。おいおい、嘘だろ、、、キングオーラゴリラに与えたダメージは大きく無いとは言え添島でも五重強化が掛かっている状態でやっと互角に戦える相手だぞ?そんな相手に傷を与えただと、、、!?だがこの攻撃は先程の衝撃波を回避して敵の虚を突いたから当てられたものではあるだろう。次は通用するとは思えない。そして俺は不可解な点に気がつく。山西が放った攻撃は一発、、、なのにキングオーラゴリラの身体には二つの刺し傷が付いていた。
「グオオオオオオ!」
自分の肉体を傷付けられたキングオーラゴリラは激昂して標的を山西に切り替える。山西はより一層息を荒らげふらふらとした様子でキングオーラゴリラに向かって槍を突き出す。何が何だか分からないが山西にし注意が集中している今がチャンスだ。
「添島!今だ!」
「おうよ!気円蓋!」
添島がものすごい勢いで加速してキングオーラゴリラを山西と挟み撃ちにする。そして山西は再び衝撃波を食らい仰け反る。だが山西は直ぐに体勢を整えて再び目にも見えない速度でキングオーラゴリラの身体を槍で突き刺した。そして後ろから添島がオーラドーム込みの全力の一撃をオーラゴリラの背中に叩き込んだ。
「グオオオオオオ!」
添島の攻撃をまともに食らい、尚且つその衝撃で山西の槍が深く食い込みキングオーラゴリラは血飛沫を上げて唸る。そして山西は力を失ったかの様にその場に倒れた。だがキングオーラゴリラは最後の力を振り絞って山西に向かって螺旋状の気を練り始めた、、、不味い!そう思った俺は早かった。
「内部圧縮属性付与(インプレスエンチャント!)風!」
爆炎の方が勢いは出たのだがそんな事はどうでも良かった。大怪我を負うリスクはこちらの方が圧倒的に低い。咄嗟にインプレスエンチャントを放っても比較的安全だと考えた風属性を俺は自分の後ろに放ち急加速する。そして山西を抱き抱えて離脱する。そして、
「ぐわぁぁあ!」
あ、すまん完全に添島の事忘れてた。まぁ添島だから大丈夫か、、、まず直接食らった訳じゃ無いし。添島はキングオーラゴリラの後ろでキングオーラゴリラの攻撃の衝撃波の余波で吹き飛んだ。そして、キングオーラゴリラはその場で倒れた。
「ッ!?」
その様子を見た猿たちは騒ぎながら一斉にばらばらになり去って行った。猿だけに去るってか、、、?俺はインプレスエンチャントを即座に放ったにも関わらず不思議と腕にダメージを負う事は無かった。遂に成功したのだ。
「添島、、、大丈夫か?」
俺は添島に声をかける。
「大丈夫だ。しばらく動けないけどな、、、それにしても山西のあの能力は何だ?身体能力の向上は分かったんだがあの不気味な動きや不可解な現象、、、」
それは俺も分からない。そしてキングオーラゴリラの死体を見ると山西の一回目の攻撃の傷は二箇所あるのに対して二回目は一箇所しか無かった。これは後で山西に問いただすとしよう。こうして、俺達はキングオーラゴリラの討伐に成功するのであった。